フランチェスカが長く生きてきたミラノを中心としたデザインは雑貨や家具、あるいはファッションで名声を博してきた。
つまり彼女はメインストリームのなかにいる。
その人が今、思い抱くこれからのデザインは「世界レベルで人々の日常生活の向上に貢献することで、社会が直面している不平等、環境、病、支援、地域といった問題に立ち向かうことでしょう」と、従来の枠が広がることに目を向ける。
プロジェクトとは前に何かを投げ出すという意味のラテン語に由来するが、イタリアにはプロジェクト=デザインと考える文化がある。ミラノに継承されてきたこの土壌が新たな展開を切り開くことに期待を寄せているのである。そういう想いをもって大学でも教壇に立っているのだろう。
最後に私生活に話題を戻すと、弁護士の夫と今秋から高校に通い始める娘がいる。娘が小さなときから国内外、ギリシャの神殿などさまざまなところに連れていったためか、彼女も旅やアートを愛する娘に育った。
フランチェスカは笑みを浮かべながら「私もスポーツはやってきたけど、娘はスポーツが大好きで、勝つことにも燃えるのよね」と話し、「一方、私は映画をみたり小説を読んで時を過ごすことが多いわ」と説明を付け加える。
と言いながらも「よく散歩するけど、その間も仕事の原稿について考えていたりすることが多いかも」と、起業家精神を発揮した母親譲りの好奇心の胎動には容易に抵抗できない。
デザインを仕事のフィールドとしながら、ファッションとしてケンゾーやイッセイ・ミヤケを好み、スカンジナビアのプロダクトデザインに惹かれるのも、深さを究めるフランチェスカ流のアングル設定なのだろう。
【ミラノの創作系男子たち】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが、ミラノを拠点に活躍する世界各国のクリエイターの働き方や人生観を紹介する連載コラムです。更新は原則第2水曜日。アーカイブはこちらから。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ローカリゼーションマップ】も連載中です。