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「共感を呼べ!」と叫ばれる今 人のいない風景を追うカメラマン、グレゴールの作品に思う (2/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 その翌々日、南チロル、すなわちアルプス山脈のイタリア側にある街に着いた。

 実は、この街に迫る山の上でグレゴールの展覧会が開催中だったのだ。標高およそ2300メートルの山頂に写真美術館がある。崖から突き出たような部分がレストランになっている。

 グレゴールの選んだ対象はまた人のいない建築物だ。北極圏にある各国の軍事施設を撮影したのだ。地球温暖化により北極圏の氷塊が溶け、海面が上昇すると予測されている。

 悲観的な未来像が多い。東京の東側地域も海面下となる。世界の南に住んでいた人が北に住まないといけない時代が近い、と。しかし、裏を返せば、これまで「非生産的」な土地といわれたシベリアやカナダが肥沃な土地に生まれ変わることになる。

 アジアとヨーロッパを繋ぐスエズ運河にコンテナ船が列を作っているが、北海航路が開拓されるとヨーロッパとアジアや北米の距離がぐっと短くなる。

 今の時代に恩恵を蒙る人たちは、今の時代に悲運をかこつ人たちに何らかの僥倖の機会を提供するタイミングになりつつあると考えるのもひとつだ。

 この展覧会を観る前、息子は「ぼくたちの世代には、後の世代が続かないかもしれないという危機感があるんだよ」と話していた。

「ぼくはグレゴールのような写真を撮る人間ではないけど、こういうことに人生を賭けている写真家がいる、ということはよく分かった」と後になって息子は話す。

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