社長を目指す方程式

私たちはなぜ、誰かに何かを頼むことを気まずく思うのか? (1/2ページ)

井上和幸
井上和幸

《今回の社長を目指す法則・方程式:デイビッド・ロック「社会的脅威の5つのタイプ」》

 人にものを頼むということは、何かと気を使うものです。ましてや、このリモートワークの環境下、オフィスで同じ空間にいるときならばその場の状況も察しながら声掛けできたものが、オンラインでは相手の状況も分かりません。上司の皆さんにとって、社長や上役に対してのみならず、部下に対しても「何かを頼む」ということについては、ビフォアコロナ以上に気兼ねもするし、腰が重くなるものでしょう。

 一方、できる社長や社長になる上司は頼み上手で、気軽にサクサク頼みごとをしているように見えます。いったい何が違うのでしょうか。今回は、人にものを頼む際に感じる「気まずさ」や「気持ちの重たさ」を取り除く方法を考えてみましょう。

 「億劫な気持ち」は脳の痛みに?!

 私たちは誰かに頼みごとをすることについて、なぜ苦痛を感じるのか。まずひとつには、その精神的なストレスについて脳が現実に痛みを感じるからだという研究結果があるのをご存知でしょうか。

 比較的新しい科学分野である心理神経学、社会神経学において、脳が筋肉のけいれんやつま先をものにぶつけたときに感じる身体的な痛みを処理するのと同じような方法で、他者との関わりから生じる不快感を処理していることが明らかになっているそうなのです。

 脳科学研究者で、神経科学者とビジネスリーダーを一堂に集めた世界的イニシアチブである「ニューロリーダーシップ・サミット」の創設者であるデイビッド・ロックは、私たちの脳が物理的な痛みを感じるときと同じように反応し、記憶力や集中力の低下をもたらす「社会的脅威の5つのタイプ」があることを発表しています。

1.「ステータスへの脅威」から生じる痛み

 他者と比較した自らの価値や重要性の認識が脅かされる、貶められることで感じる痛みです。人は他者に何かを頼むときに、無意識的に自分のステータスが下がるのではないかと感じがちです。

2.「確実性への脅威」から生じる痛み

 人間には「未来を予測したい」という生まれ持った欲求があります。これは先が見通しにくい、あるいは何か不測の事態が起きるのではないかといことについて感じる痛みです。他者に何かを頼む際、それを受けてくれるかどうか分からないと思うことは多いでしょう。

3.「自律性への脅威」から生じる痛み

 人は自分で物事を選択し行動しているという感覚がありますが、これが侵されることで感じる痛みです。ものを頼んだ際に、相手の反応を受け入れざるを得ないということがその人の自律性を脅かします。

4.「関係性への脅威」から生じる痛み

 ここでいう関係性とは、集団への帰属意識や他者とのつながりのことを指しています。これが脅かされることで感じる痛みです。もし依頼したことについてNOと言われると、そのことで依頼した人は疎外感を感じがちです。

5.「公平性への脅威」から生じる痛み

 私たちは公平に扱われることに対して非常に敏感です。これが損なわれることで感じる痛みです。自分の依頼にNOと言われたときに、相手との関係に公平性を感じることはなかなかできません。

 どうでしょう。私たちが何かを他者に頼もうとすると、これだけの脅威を感じ、痛みを感じるのです! これでは「そんな(痛い)思いをするくらいなら、依頼するのはやめておこう」と常に思ってしまっても仕方がないとも言えますよね…。

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