ローカリゼーションマップ

「これからはアート思考だ!」と熱くなっているのは日本だけ? (3/3ページ)

安西洋之
安西洋之

 とはいえ、デザインはビジネスの世界のなかで育まれ、共に歩んできたとの素性が色濃い。実践者も研究者もデザインとビジネスの関係については、それなりの知識とノウハウもある。

 アートはビジネスの世界とは無縁であることに意味があった。だからこそ新しい要素としてのアートがビジネスパーソンの目に新鮮に映る(殊に、アートとは縁のなかったビジネスパーソンにとっては)。そのため、アートとビジネスの関係についての経験や蓄積があまりに少ない。 

 ゆえに、デザイナーやアーティストとはまったく関係のないところで、デザイン領域を推進したい人とアート領域を推進したい人が、不毛な議論をしがちである。どちらがビジネスに効果的なアプローチか?と争う。 

 この議論が世界の各地で頻繁に起こっているのならまだ分かる。例えば、実際、「デザインはビジネスに有効か?」との議論は散々されてきた。

 しかし、ぼくの確認した限り、アート思考を巡る議論については日本での特殊現象のようだ。日本のそれなりのレベルの人たちが、実体のないものに言葉を費やしているようにみえる。

 もちろん、日常生活で使う道具からはじまり建築物に至るまで、アートは日本のなかに生きている。だが、アート思考との表現でイメージするのは、西洋近代に生まれたファインアートだけのような気がする。

 何か大切なことを忘れていないだろうか。とても根本的なことを置き忘れて青筋をたてていないだろうか。

 言葉と経験、あるいは言葉と実体、これらの関係を見失ったまま、「日本では抽象的概念を体系的につくるのが弱い!」との後ろめたさに背を押されていないか。だから本来、曖昧であるべきものを無理にボックスに入れようとする。そう危惧する。

 問題とすべき対象はアート思考そのものではない。アート思考を巡って議論が生じる文化的な土壌である。

安西洋之(あんざい・ひろゆき)
安西洋之(あんざい・ひろゆき) モバイルクルーズ株式会社代表取締役
De-Tales ltdデイレクター
ミラノと東京を拠点にビジネスプランナーとして活動。異文化理解とデザインを連携させたローカリゼーションマップ主宰。特に、2017年より「意味のイノベーション」のエヴァンジェリスト的活動を行い、ローカリゼーションと「意味のイノベーション」の結合を図っている。書籍に『「メイド・イン・イタリー」はなぜ強いのか?:世界を魅了する<意味>の戦略的デザイン』『イタリアで福島は』『世界の中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』。共著に『デザインの次に来るもの』『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか?世界で売れる商品の異文化対応力』。監修にロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』。
Twitter:@anzaih
note:https://note.mu/anzaih
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ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解すると共に、コンテクストの構築にも貢献するアプローチ。

ローカリゼーションマップ】はイタリア在住歴の長い安西洋之さんが提唱するローカリゼーションマップについて考察する連載コラムです。更新は原則金曜日(第2週は更新なし)。アーカイブはこちら。安西さんはSankeiBizで別のコラム【ミラノの創作系男子たち】も連載中です。

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