【IT風土記】佐賀発 ドローンやICTブイで海の異変を察知 有明海で進む次世代型ノリ養殖 (1/3ページ)

 有明海でのノリ養殖が盛んな佐賀県で、ノリのさらなる品質向上と収量アップにつなげようと、ノリ養殖に最新のAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)技術を活用するプロジェクトが動き出した。ノリ養殖漁場の海面を撮影できるドローンや、海面の水温や比重(塩分濃度)を測定するICT(情報通信技術)ブイを活用して、ノリの生育に悪影響を与える病害や赤潮の発生を早期に検知することを目指している。

 有明海を舞う固定翼型ドローン

 佐賀県沖の有明海上空をグライダーのような固定翼型のドローンが舞う。海面に見える黒い5本の筋は養殖用のノリ網だ。ノリ養殖の区画は水平線の向こうにまで張り巡らされている。ノリ網の数は実に約30万枚。単純計算で山手線の内側の1.3倍に当たる9000ヘクタール以上もの漁場が広がっている。年間の生産枚数約20億枚、14年連続で生産枚数全国一の座を守り続けている佐賀県を象徴する風景だ。

有明海を旋回するオプティムが開発した固定翼型のドローン「オプティムホーク」。海面に見える黒い筋が養殖用のノリ網(オプティム提供)

有明海を旋回するオプティムが開発した固定翼型のドローン「オプティムホーク」。海面に見える黒い筋が養殖用のノリ網(オプティム提供)

 空中を舞う固定翼型のドローンは、AIやIoT開発を行うベンチャー大手、オプティムが開発したものだ。オプティムは佐賀県やノリ養殖漁業者で組織する佐賀県有明海漁業協同組合、佐賀大学、農林中央金庫、NTTドコモの産官学6者でAIやIoTなどの最新技術の活用を目指す協定を昨年3月に締結。ノリ養殖が本格化する昨年11月からこのドローンを飛ばし、本格的な実証実験に着手した。

 「ノリの養殖漁場はエリアが広く、管理が大変なんです。病害や赤潮もいつどこで起きるかわかりません。ドローンやAI、IoTの技術を活用することで発生を早期に発見できれば、被害を未然に防ぐこともできます。今回の取り組みでその可能性を探っているところです」とオプティムの速水一仁インダストリー事業本部サブマネージャーは話す。

IoTを活用したノリ養殖の実証実験について説明するオプティム・インダストリー事業本部の速水一仁サブマネージャー

IoTを活用したノリ養殖の実証実験について説明するオプティム・インダストリー事業本部の速水一仁サブマネージャー

ノリの病害や赤潮の兆候を探れ