宿泊施設トイレなど車椅子入れず 都条例に盲点、実証実験で判明

 2020年東京五輪・パラリンピックに向け、東京都が改正を目指すバリアフリー条例の宿泊施設に関する規定に、思わぬ盲点が浮かんだ。障害者団体が実証実験を行ったところ、トイレ、浴室の出入り口や通路幅の基準が狭いため、車いすの種類によっては通れないことが分かった。都は「あくまで最低基準」として2月議会に改正案を提出し、9月施行の予定だが、国内外から訪れる車いす利用者の宿泊環境整備が課題となりそうだ。

 都によると、条例で一般客室の整備基準を規定するのは全国で初めて。9月以降に着工するホテルや旅館で、新築または増改築部分の床面積が1000平方メートル以上の場合、客室入り口の幅は80センチ以上とし、道路や駐車場から客室への段差をなくすことなどを盛り込んだ。基準を満たさなければ着工を認めない。

 問題となっているのはトイレ、浴室の出入り口部分の幅を70センチ以上とした点だ。都は、日本工業規格(JIS)で車いすの幅が70センチ以下とされていることや、各団体の意見を検討して決めた。

 ところが障害者団体「DPI日本会議」(東京)が通路や出入り口に見立てて段ボールを両側に並べ、ぶつからずに進めるか実験した結果、手動の車いすは通ることができたが、電動の車いすはほとんど通れなかった。

 実験で使った5種類の車いすは全て幅70センチ以下だが、電動は全長が1メートル超と大型のため、通路から直角に曲がってトイレや浴室に入るには出入り口や通路の幅を広くする必要があるという。

 同会議の今西正義バリアフリー担当顧問は「車いすの人が泊まれる客室が少ない中、都の取り組みは歓迎するが、机上の議論で決めずに検証を基に見直してほしい」とし、トイレ、浴室の出入り口の幅を75センチ以上、通路の幅を1メートル以上とするよう要望。こうした意見を受け、都は浴室出入り口の幅を75センチ以上にすることを努力義務とした。

 国交省は9月から宿泊施設に対し、車いす利用者向けの客室割合を総客室数の1%以上にするよう義務付けており、都の担当者は「今後はさまざまなタイプの客室を増やしていきたい」と理解を求めている。