海外情勢

オーストラリアのエアーズロック 入山禁止間近で観光客殺到 (2/2ページ)

 先住民の思い尊重

 一方、聖地への理解が進み、登山を控える動きも広がっている。1990年代には観光客の約4分の3が登っていたが、入山禁止が決まった頃には約16%まで減少。ドイツから家族と訪れたカシア・ボイトジャックさんも「登ってほしくないという先住民の思いを尊重したい。眺めるだけで美しく、登らなくても楽しめる」と語った。

 ごみを捨てる登山者のマナーや、登山道の岩盤の摩耗による滑落事故の発生など、観光客の入山に伴う問題も多発している。ボールドウィンさんは「聖地に踏み込まれる不快感を抱える一方、安全を確保できないことに責任も感じている」と先住民の思いを代弁する。

 「ウルルは天地創造の神話が宿る場所。登られなくなるのはうれしい。観光客には麓を歩いて楽しんでもらえれば」と、国立公園役員会の副会長で先住民のデイジー・ウォーカバウトさん。ただ、入山禁止後、訪問者が減ることを懸念する声もある。

 国立公園近くのホテルでアシスタントマネジャーを務める立田謙二さんは「登山をする、しないにかかわらず、ウルルは先住民文化に触れることができ、大自然を味わえるところだ」と変わらぬ魅力を訴えた。(ウルル 共同)

【用語解説】ウルル(エアーズロック)

 オーストラリア中央部にある巨大な岩山。高さ約348メートル、周囲約9.4キロで、一つの岩としては世界最大級。先住民アボリジニの聖地で、1985年に政府が先住民を一帯の所有者と認め「返還」した。その後、先住民らが国立公園にリースして観光客を受け入れている。英語名の「エアーズロック」で知られるが、最近は先住民による名称「ウルル」を使うことが多い。一帯の国立公園は国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産のうち、自然と文化の要素を併せ持つ複合遺産に登録されている。(ウルル 共同)

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