経済インサイド

マイナンバーカード取得しない人の誤解 国はもう個人情報を連携させている (2/2ページ)

 マイナンバーカードは希望者にのみ交付されるプラスチック製のカードだが、マイナンバーはすでに全国民に割り振られている12桁の番号だ。国や市区町村などは行政サービスを行う過程で、国民の所得や就業、健康など多くの情報を持っており、こうした情報を番号を使って組織横断的に連携させれば、より充実した行政サービスが提供できるようになることから導入された。

 つまり、一部の人が懸念するような個人情報の連携はカードの発行の有無に関わらず、すでに行われているのだ。

 番号で管理するのは、名前だと同姓同名の人を間違えるなどミスが起こりやすいためだ。ただ、平成27年に制度が始まった際は、国民への監視強化や、個人情報流出を懸念する声が根強く、不正な情報漏洩(ろうえい)に対する罰則も設けられた。

 ある総務省の担当者は当時を振り返り、「マイナンバーは大切に管理してくださいと呼びかけすぎたかもしれない」と話す。マイナンバーが記載されたカードにも警戒感が高まり、普及の妨げにも繋がっているからだ。

 ただ、仮にカードを落としてマイナンバーが他人に知られたとしても、顔写真付きの身分証や暗証番号がなければ、個人情報を見ることはできない。銀行のキャッシュカードも拾っただけでは口座から現金が下せないのと同じだ。

 “お得”を強調するのでなく

 もちろん、マイナンバーを他人に伝えたりすることは控えるべきだが、今のように持ち歩くことすら敬遠される状況では、マイナンバーカードの本来の目的も達成できない。

 マイナンバーカードはデジタル社会の到来を見据えて導入された。デジタル社会ではパソコンやスマートフォンなどで、さまざまな行政手続きができるようになるが、その際の本人確認などで必要不可欠なものだ。また、社員証や図書カードなど複数のカードを一本化できるメリットもある。

 政府はマイナンバーカードの交付枚数が、マイナポイント事業で最大4000万枚となり、来年3月に保険証の機能が備わることで最大7000万枚となり、令和5年にはほとんどの国民が所有すると想定する。

 その意味では、マイナポイント事業は普及に向けた取り組みの序章でしかない。政府のマイナポイント事業の広報を見ていると、“お得”な点を強調するあまり、本質的な議論が欠落しているようにも見える。本格的な普及を目指すなら、マイナンバーカードの必要性や、社会にもたらすメリット、安全対策などについて改めて周知し、理解を得る取り組みが不可欠だ。(経済本部 蕎麦谷里志)

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