世界文化賞

    大地が導く軽やかな空間 建築部門 グレン・マーカット氏

    世界の優れた芸術家を顕彰する「高松宮殿下記念世界文化賞」(主催・公益財団法人日本美術協会=総裁・常陸宮殿下)の第32回受賞者が14日発表され、建築部門はオーストラリアの自然風土を重視した建築で知られる建築家、グレン・マーカット氏(85)=オーストラリア=に決まった。

    2021年世界文化賞 提供写真建築部門 Architectureグレン・マーカット Glenn Murcutt2) Glenn M 2021 4Photo: Anthony Browell
    2021年世界文化賞 提供写真建築部門 Architectureグレン・マーカット Glenn Murcutt2) Glenn M 2021 4Photo: Anthony Browell
    2021年世界文化賞 提供写真建築部門 Architectureグレン・マーカット Glenn Murcutt6) MurcuttMosque 10『オーストラリア・イスラミックセンター』2016年 豪メルボルンPhoto: Anthony Browell
    2021年世界文化賞 提供写真建築部門 Architectureグレン・マーカット Glenn Murcutt6) MurcuttMosque 10『オーストラリア・イスラミックセンター』2016年 豪メルボルンPhoto: Anthony Browell

    オーストラリアの大地に根差し、気候風土に寄り添うサステナブルな建築で世界的に知られている。

    ロンドン生まれ。幼少期をパプアニューギニアで過ごし、オーストラリア・シドニーで育った。建具業を営む父を手伝い、海外の建築誌に親しみ、自然に建築の道に進んだという。

    現在のニューサウスウェールズ大学(UNSW、豪)を卒業後、ギリシャやフィンランドなど欧州各地の建築を視察。帰国して建築事務所で経験を積み、1969年、シドニーに個人事務所を開設した。妥協のない仕事をするために所員は抱えず、特別な協働を除いては、建築に関わる全過程を一人でこなす。

    主に個人住宅を手掛ける。オーストラリア国外で仕事をすることもない。「その国の言語を話し、文化や歴史を知り、気候、土壌、植生など幅広く理解する必要があるから」と理由は明快だ。使うのは地元の木材や波形鋼板、石、ガラス、コンクリートといった簡素な素材。アボリジニの言葉「地球に軽く触れる」にならうように、自然に寄り添うマーカット建築は、詩的な美しさと軽やかさを持つ。同時にモダニズム建築の合理性、エコロジカルな知恵も随所に光る。

    出世作「マリー・ショート邸/グレン・マーカット邸」(74/80年)は細長くシンプルな浮き床の家屋。天窓やガラスのルーバーなどによって日差しや風の量を調節でき、空調に頼らず快適に過ごせる。生活空間だけでなく、「アーサー&イヴォンヌ・ボイド教育センター」(99年)や「オーストラリア・イスラミックセンター」(2016年)などの文化施設まで、450件以上のプロジェクトに関わってきた。

    自らはクリエーター(創造者)ではなく発見者だと説く。建築とは観察し、見いだす過程そのものという。

    フィンランドのアルヴァ・アアルト・メダル(1992年)、米プリツカー賞(2002年)、米国建築家協会(AIA)ゴールドメダル(09年)など受賞多数。UNSW建築環境学部の名誉教授も務めている。


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