カニに似た味わいと食感のカニ風味かまぼこ、通称「カニカマ」が、今年で誕生から50年を迎えた。開発したのは、石川県七尾市の食品加工会社「スギヨ」。実は、人工クラゲを開発しようとして失敗したことから生まれたという。「インスタントラーメン、レトルトカレーと並ぶ戦後の食品三大発明の一つ。もっと魅力を知ってもらいたい」と、同社広報の水越優美さん。PRに力を込める。ちなみに6月をのぞく毎月22日は「カニカマの日」。指で「2」をつくったときのピースマークがカニのハサミに似ていることから同社が決めた。本物のカニへの敬意から6月は除いたという。
誕生から50年の今年は、海外の映画祭でも評価を集める短編映画の名手、平林勇監督が手がけた開発秘話の動画「カニカマ氏、語る。」を同社のホームページなどで公開。
カニカマを使った料理レシピの開発にも余念がない。「カニカマと焼きナスのジュレ仕立て」など、日本料理店「賛否両論」(東京)の店主、笠原将弘さん監修の26のレシピを始め、和、洋、中、エスニックと計180のアイデアレシピを幅広く提案している。
ファンクラブも
「あとをひくうまみと、何にでも合う懐の深さ。長持ちして、骨を取る手間もない手軽さ…」。あふれるカニカマ愛を語るのは、都内在住の社会保険労務士、筒木葵さん(44)。平成28年に結成したカニカマファンクラブ(会員430人)の会長だ。
おいしさに気づいたのは約7年前。屋台で衣をまとい揚げられたカニカマを食べ、「熱を通すとこんなにおいしいんだ!」。それまでは「サラダに入っていても、気にかけていなかった」が、印象が一変した。
以降、卵でとじたカニカマ玉や、炒め物、茶碗(ちゃわん)蒸し、みそ汁などあらゆる料理の具材に。
おすすめは、スペインでも食べられているカニカマのアヒージョで、その写真は、29年に出版したカニカマ料理のレシピ集「カニカマ100皿」(文芸春秋)の表紙になった。油との相性が抜群で、「カニカマの天ぷらは、あのちくわ天がライバルと語る人もいるくらい、おいしい」という。
和洋中…どんな料理にも合い、「タンパク質が豊富なので、筋肉トレーニング好きな知人も好んで食べています」(筒木さん)。肉を買い忘れたとき代用すると、普段と違う味わいが楽しめるそうだ。(津川綾子)