米ロが注力する宇宙船の原子力推進装置 火星・木星探査に不可欠な核熱エンジン開発

火星探査ローバー「キュリオシティ」。機体後部(写真右)に斜めに突き出した部分がRTG(NASA)
火星探査ローバー「キュリオシティ」。機体後部(写真右)に斜めに突き出した部分がRTG(NASA)

またNASAは、これまでに5機の探査ローバーを火星地表に着陸させているが、2012年に打ち上げられた「キュリオシティ」と、2021年の「パーサヴィアランス」には、同じくRTGが搭載されている。

それ以前の3機の動力源は太陽光パネルによる発電だったが、火星地表に定期的に発生する砂嵐によって、太陽光パネルに砂が被ったことによって発電効率が低下し、運用が停止された。しかし、着陸からすでに10年が経過したキュリオシティ、そしてパーサヴィアランスは、いまこの瞬間も火星地表を探査し続けている。

同じくNASAが2018年に打ち上げた「インサイト」は、ホイールを持たない(移動できない)着陸機であり、地中深くにセンサーを挿入して火震(火星における地震)などを調査しているが、この5月に太陽光パネルへの降砂の状態がひどくなり、リタイアの時が近づいているとNASAがレポートしている。

土星の周回軌道に史上はじめて投入されたNASAの土星探査機「カッシーニ」にもRTGが搭載されていたが、その運用が終了される際、土星の大気圏に落とされ、燃え尽きている。これは核推進装置が土星の環境に何ら影響を与えないための配慮だ。

RTGを搭載した土星探査機「カッシーニ」。運用が停止される際は土星の大気圏に突入させ焼却処分された。プルトニウムによる環境汚染を避けるためだ(NASA/JPL)

惑星探査に不可欠な核エネルギー

液体からなる化学燃料は重く、太陽から遠ざかれば太陽光発電もままならない。有人の月探査、火星探査が目前に迫り、さらに深い宇宙へのアプローチを人類が続けている現在、宇宙開発において核エネルギーが欠かせない。

核推進システムが地表に落下する、宇宙船の搭乗員に影響する、他天体の環境に影響を与えることなどは絶対に避けなければいけない課題となるが、他に高効率なエネルギーが見つからない限りは、私たちはこの80年間と同様、宇宙開発においても核と上手く付き合っていく必要があるだろう。

【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。アーカイブはこちら

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