18億個もの星を俯瞰する宇宙望遠鏡「ガイア」 最新データと、「動く星」の3Dマップが示す真理とは?

「ガイア」によって判明した事実


1.星々は地球に近づいている?遠ざかっている?

2.星々の速度は?

3.星々の大きさと年齢は?

4.星々は地球から、どれだけ離れている?

5.星々はどんな物質で出来ている?

6.連星か?

1.星々は地球に近づいている?遠ざかっている?

(ESA / Gaia / DPAC)
(ESA / Gaia / DPAC)

この画像データは、冒頭でご紹介した全天マップと同じフレームで、中央左右に天の川銀河が横たわっている。以後に紹介する画像データもすべて同様だ。

このデータは、星々が地球に近づいているか、遠ざかっているかを可視化している。赤みがかった右側の領域が地球から遠ざかり、左の青い領域が近づいていることを表している。

天の川銀河は「棒うずまき銀河」というタイプの銀河であり、それ自体が回転しているため、このような結果となる。星々が放つ紫外線や可視光、赤外線などの電磁波の波長によって、星の動きが識別できるのだ。


2.星々の速度は?

(ESA / Gaia / DPAC)

天体の移動速度を表す基準として「視線速度」というものがある。これは私たち地球からの観測者から見て、奥行き方向の天体の移動速度を示す。

この画像データでは、右手の赤みを帯びた部分が地球から遠ざかり、左手の青い部分が近づいているが、どちらも色味が濃いほうが、その移動速度が速いことを表している。


3.星々の大きさと年齢は?

(ESA / Gaia / DPAC)

今回公表されたガイアのデータからは、1億3000万個の恒星の質量と年齢が解析されている。この画像データは、青い領域に若い星、赤い領域に古い星が集結していることを示している。つまり、天の川銀河のディスク内には若い星が多く含まれ、その外側には古い星が多いことが読み取れる。


4.星々は地球から、どれだけ離れている?

(ESA / Gaia / DPAC)

星を肉眼で観測するとき、遠い星は暗く、近い星は明るく見える。しかしそれは星々の固有の明るさを正確に反映しているとは言えない。

ガイアは太陽を公転する際、遠方にある同じ天体を、微妙に違う角度から観察している(視差測定)。それによって対象天体との距離を測定し、そのうえで天体固有の光度を割り出しているのだ。


5.星々はどんな物質で出来ている?

(ESA / Gaia / DPAC)

何万光年も離れた星からやってくる電磁波を測定することで、その天体がどんな物質で出来ているかを測定することができる。その天体が持つ物質が、電磁波における特定の波長を吸収するため、地球には届かないからだ。物質がどの波長を吸収するかは、厳然とした法則がある。

ガイアが取得したこのデータは、それぞれの天体の金属の含有量を示している。ビッグバンから間もない時期は、宇宙には水素やヘリウムなどの、構造がシンプルで軽量な元素しか存在しなかった。それらが集積した結果、星が生まれ、その内部で金属が生成される。つまり、金属を多く含む領域(赤)は若い星が集積する場所であり、金属の含有量が少ない青い領域には、古い星が集まっていることが分かるのだ。


6.その星は連星?

宇宙に誕生する約3分の1は「連星」だと考えられている。連星とは、ペアを成すふたつの恒星が共通の重心を公転する「双子星」のこと。そうした連星を数多く調査することは、天の川銀河や宇宙の誕生と構造を解明するカギとなる。

この動画は、ガイアが観測した335個の連星の挙動をイラスト化したもの。色はその天体のタイプを表現している。

ガイアは81万3000個の連星を観測し、包括的なデータベースを構築し、その実態を解明するための貴重なデータを天文学者に提供しているのだ。


ガイアの“任期”延長

ガイアは当初、打ち上げから5年間の運用が予定されていて、2019年7月には破棄される予定だった。しかし現在そのミッションは、2025年12月31日まで延長されている。

【宇宙開発のボラティリティ】は宇宙プロジェクトのニュース、次期スケジュール、歴史のほか、宇宙の基礎知識を解説するコラムです。50年代にはじまる米ソ宇宙開発競争から近年の成果まで、激動の宇宙プロジェクトのポイントをご紹介します。アーカイブはこちら

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