“身売り”に感極まったのか… シャープ公式アカウントの「無常観」
経営再建中のシャープが台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入る交渉に重点を置く方針を明らかにして以降、シャープ製品を宣伝しているツイッター上の公式アカウント(以下公式)が、揺れる胸中を吐露したつぶやきで話題を集めている。これまで自虐とも受け取れるつぶやきもあるものの、基本的には会社愛あふれるトーンを中心にしてきた。しかし今回、外資への“身売り”ともいえる事態にさすがに感極まったようだ。(織田淳嗣)
こんな日に28万人
「な ん て 日 だ !」
シャープが鴻海との交渉重点を打ち出した4日、公式はお笑いコンビ、バイきんぐの小峠英二さんの決め台詞を引用した。反響は大きく、リツイート(引用投稿)は、5500件(8日現在)に達した。
同日、公式のフォロワー数は初めて28万人に到達し「こんな日にフォロワーさん28万になりました。こんな日に」と報告。さらに歩道橋から見た本社と向いの田辺ビル、青空にはためく社旗、新幹線の電光掲示板に流れるニュースの字面などを写し、感傷的な様子をうかがわせていた。
週明けの8日も余波が続いているのか。「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらずだし、ゆく弊社の流れも絶えずして、しかも製品は新モデルに変わります。淡々と。」と鴨長明の方丈記を引き合いにして「無常観」をあらわしていた。
変化も
フォロワーにも国内大手電機の一角を占めるシャープが外資に買収されることにアレルギーを持つ人は多い。ただ、鴻海が親日国の台湾の企業であることもあって比較的寛容になっている変化も公式へのツイートへの反響からうかがえる。
3年前、韓国・サムスン電子がシャープに103億円の出資を決めた際には、公式は激しい批判に見舞われた。
サムスンはシャープ製の液晶パネルを購入している「大事なパートナー」(シャープ幹部)ではあるが、シャープからの技術供与を受けて発展し、円高ウォン安の局面に乗じて、安価なテレビを売りさばき、シャープの業績悪化の原因にもなったからだ。
当時、シャープは首脳が会見を開かず、広報担当者が説明するにとどまったことから怒りが公式に集中した。「シャープは、日本の会社とは認めません!」など厳しい声があった。
これに対し、公式は「私のことは嫌いになっても…シャープの製品のことは嫌いにならないでください」と投稿した。元AKB48のタレント、前田敦子さんの有名な言葉を引用した絶妙な切り返しで注目を集めていた。
当時に比べると、鴻海傘下入りには技術流出を懸念する声は一定数はあるが、批判の声は少ない。
むしろ、「頑張れシャープ」「AQUOSとヘルシオユーザーです…応援してます」など、応援メッセージが圧倒的な情勢だ。
懸念の声も「絶対に工場の屋上から身投げする若い工員を出さないでください!」など、シャープではなく、鴻海の労働環境に向けられているものが目立っていた。
注目度増す公式
公式は、アニメやゲームの話題のほか、ツイッターでの流行を踏まえた投稿が多く、経営危機下らしからぬ態度に「ふざけている」との批判の声は大きい。しかし一方で、ネットの掲示板には「あいつは働いている方なんだぞ」とのフォローの声もあるのは確かだ。
公式はゲーム機とシャープ製洗濯機が似ていることから、ゲームメーカーと共同イベントを仕掛けて洗濯機を売るなど、独特な手法でシャープのイメージアップに貢献している。人材流出の著しいシャープにおいては、貴重な存在となりつつある。
鴻海との交渉期限は今月の29日。決算発表時以外の対外的なコメントを避け続けている経営トップに代わり、公式からどのような響きを伴った声が聞かれるのか、これからも目が離せない。
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