【漂流シャープ(下)】
「優先的に交渉できる権利にサインした」
5日午後5時半すぎ、大阪市阿倍野区のシャープ本社で、台湾・鴻(ホン)海(ハイ)精密工業の郭台銘会長は、興奮ぎみに報道陣のカメラに文書をかざした。
ところが、その約1時間後、シャープは「優先交渉権を与えた事実はなく、最終的な契約条件を適時、誠実に協議するとした合意書を締結した」と発表した。本格交渉はすれ違いで幕を開けた。
4日、シャープから鴻海との交渉を先行する方針を伝えられた郭会長の動きは早かった。「春節(8日)前後の連休前に交渉を加速させたい」と乗り込んできたのだ。台湾のカリスマ経営者の電撃訪問は噂にたがわぬ豪腕をうかがわせた。
「郭会長はシャープのすべてを欲しがっている」
鴻海関係者は買収の狙いを、こう解説する。
家電や電子機器などの組み立てという業態で世界有数の企業に成長した鴻海はあくまでメーカーの“黒子”だ。消費者の手にわたる最終商品を製造・販売するシャープを傘下に加えることは、ブランドを手に入れるとともに、メーカーとして表舞台に躍り出ることを意味する。