NTT長距離通話料の低廉化期待 固定電話IP化、総務省が移行検討

 
固定電話網のIP化に関する検討会がスタートした=25日、総務省

 NTTが大量の交換機で構成していた固定電話網をIP(インターネット通信手順)技術に基づくネットワークに移行する作業が2021年にも本格的に始まる。IP化によってネットワークの運用効率が高まるとともに長距離通話料金が安くなる見通しだ。総務省の情報通信審議会は25日、固定電話網の円滑な移行について検討を始めた。

 NTTは東京五輪後の21年から固定電話網を構成する交換機をIP化する作業に着手する見通し。25年にはIP化への移行をほぼ完了し、それまでに電話サービスを切り替える方針だ。

 NTTの固定電話網は現在、500台弱の中継交換機の下に加入者交換機が5000台強設置され、全国均一の料金で音声通話サービスを提供している。

 電話料金は、区域内が3分8.5円(税抜き、平日昼間)だが、20キロまでが20円、20キロ超~60キロまで30円、60キロ超が40円と距離ごとに設定されている。

 一方、光サービスの付帯サービスとして提供されているIP電話(「ひかり電話」)は距離や時間に関係なく3分8円と割安だ。

 鵜浦博夫NTT社長は「市内通話は同じ料金を維持したい。長距離通話は、例えば定額制の可能性もある」と説明。交換機による回線交換コストが不要になるIP電話のメリットが通常の電話でも享受できる可能性に言及した。

 固定電話の加入者数は15年3月末で2434万件で、ピークの1997年11月末の6322万件より約4000万件減少。人口より多い1億5000万を超えた携帯電話の影響で「固定電話は可能な限り維持していくが、30年後にもあるかといえば分からない」(鵜浦社長)状況だが、IP化の移行まで9年かかる大仕事となる。

 25日に開かれた情報通信審議会の電気通信事業部会では、委員から「ユーザーの視点に立った検討と採算性を考えた競争環境の整備が必要」との意見が出た。答申がまとまるのは来夏の見通しだ。