セブン&アイ、集団指導体制に移行 すったもんだの末、鈴木派、反鈴木派のバランスで事態収拾

 
セブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長(寺河内美奈撮影)

 セブン&アイ・ホールディングスは15日、取締役会の諮問機関にあたる指名・報酬委員会を開き、次期社長に、同社取締役でコンビニエンスストア事業を担う中核子会社のセブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長兼最高執行責任者=COO=(58)を昇格させる人事を内定した。

 経営の混乱の責任をとって、7日に辞任表明した鈴木敏文会長兼最高経営責任者=CEO=(83)に続き、村田紀敏社長兼COO(72)も取締役から退く。ただ、これまでの功績に配慮する形で、鈴木氏を名誉顧問、村田氏は顧問などで処遇することも了承した。

 会長やCEOは当面置かず、鈴木氏の懐刀といわれた後藤克弘取締役常務執行役員(62)が副社長に昇格し、井阪氏をサポートする。他の取締役は留任する。

 井阪氏の後任のセブン-イレブン社長には古屋一樹副社長(66)が昇格する。また、セブン-イレブンやイトーヨーカ堂などグループの事業会社で鈴木氏が兼務していたポストについても当面は空席とすることも決まった。

 指名・報酬委は新経営体制案を答申として取りまとめ、19日の取締役会に提出する。

 セブン-イレブンの井阪社長の交代の提案が端緒となったセブン&アイの経営体制をめぐる混乱は、長年グループトップに君臨した鈴木氏と、鈴木氏を支え続けた村田氏が経営トップから退き、井阪氏を社長とする集団指導体制を構築することで収束した。一連の混乱で鈴木、村田両氏が責任を取って取締役から外れるが、名誉顧問や顧問などの形で残留。鈴木氏に近い後藤氏が新設の副社長に昇格するなどバランスをとることで、事態の早期収拾を優先した内容となった。

 7日の取締役会で鈴木氏が提案した井阪氏の交代人事案が否決された後、指名・報酬委員会のメンバーである村田氏と社外取締役の伊藤邦雄一橋大大学院特任教授や米村敏朗元警視総監が新体制案について断続的に協議を続けた。

 鈴木氏は新体制の人選には直接関与しないと明言したものの、自身に反旗を翻し、交代を拒否した井阪氏の昇格には難色を示した。また、村田氏の取締役退任にも不満を示すなど調整は難航した。

 一方、社外取締役を中心に、指名・報酬委で結論が出なかった人事案を鈴木氏とともに取締役会に諮り、混乱を引き起こした村田氏の責任は免れないとの声が根強かった。社外取締役の1人は「村田氏が留任することは関係者の理解を得られない」と指摘。村田氏が社長を退任するが取締役として残留する案も出たが、最終的には取締役も退くことが決まった。

 コンビニ事業ではトップとして好業績を牽引(けんいん)した井阪氏だが、苦戦が続く総合スーパー事業などの経験はなく、グループトップとしての実力は未知数だ。後藤氏らと一致団結し、グループの改革を進められるか、新体制下で早速手腕が問われることになる。(永田岳彦)