セブン&アイ取締役会、井阪新体制を決議 「カリスマ退場」の混乱でしこりも

 
セブン&アイ・ホールディングス社長に昇格するセブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長

 セブン&アイ・ホールディングスは19日、取締役会を開き、新経営体制の人事案を議論した。セブン&アイ取締役で子会社のセブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長兼最高執行責任者=COO=(58)がセブン&アイ社長に昇格することなどを決議。5月26日開催予定の株主総会で承認を得て、新体制が発足する。

 鈴木敏文会長兼最高経営責任者=CEO=(83)と村田紀敏社長兼COO(72)はともに退任するが、今後の処遇については株主総会までに決める。

 新体制では、鈴木氏の後任の会長やCEOは置かない。新設する副社長に鈴木氏の側近、後藤克弘取締役常務執行役員(62)が昇格し、井阪氏とともにグループの経営を担う。退任する鈴木氏と村田氏以外の取締役は全員留任する。井阪氏の後任のセブン-イレブン社長には古屋一樹副社長(66)がセブン&アイの取締役も兼務し、昇格する。鈴木氏が兼ねていたセブン-イレブン会長などについて空席とすることも決めた。

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 セブン&アイ・ホールディングスの新経営体制をめぐる混乱は、ひとまず収束した。コンビニエンスストア事業で営業利益を5期連続で最高に導いた井阪氏の手腕は社内外の評価が高い。今後は井阪氏が「脱・鈴木」路線を軌道に乗せられるかが焦点となる。

 「次は本当にノーサイドにしないといけない」「混乱が続けば会社の評価が下がってしまう」-。井阪氏の交代を求める人事案に端を発した一連の混乱が鈴木氏の辞任に発展する中、多くの取締役は危機感を強めた。19日の取締役会で新経営体制が全会一致で決議されたのは、そうした危機感が共有されたからだ。まずは井阪氏を中心に一致団結することを優先した形だ。ただ、20年以上グループトップに君臨した鈴木氏の処遇については「5月の株主総会までに決める」とし、結論に至らなかった。

 同社では役員退任後、顧問の肩書で残るのが一般的だが、鈴木氏の功績が大きいことから会社側は「最高顧問」の名称を提案。これに対し、社外取締役は「影響力が残る」と反発し「名誉顧問」とするよう求めている。

 社外取締役の意見に、会社側の判断がここまで左右される事態は、カリスマ経営者とされる司令塔が不在となる影響の大きさを物語る。今後、同社は井阪氏を中心とする集団指導体制に移るとみられる。不振のイトーヨーカ堂の立て直しなど課題は重く、今回の混乱が残した社内のしこりも懸念される。(永田岳彦)