「体感」や「VR」で進化する業務用ゲームの世界 スマホと“住み分け”

 
「おといろは」には上に素早くスライドさせるコントローラーがつく

 家庭用ゲーム機の高性能化で、業務用ゲーム機にあったグラフィック性能の有利さが薄れた。その家庭用ゲーム機ですら、スマートフォンの高性能化でファンを奪われている昨今のゲーム状況。そこに挑むように、スマートフォンでも家庭用でも味わえない操作や体感の面白さで、ファンをゲームセンターに呼び戻そうとする動きが出てきている。

 スクリーンに映し出されているのは、ファンタジー調のコスチュームをまとったスタイリッシュな男性キャラクター。その彼に向かって手前にいるプレーヤーが腕を振ると、男性キャラクターが腕を振って火焔のようなものを放つ。向こうにいるキャラクターが攻撃してくれば、今度は手のひらを動かしてバリアを出す。

 2月に幕張メッセで開かれた業務用ゲーム機の展示会「ジャパンア ミューズメント エキスポ 2016(JAEPO2016)で、ゲーム開発会社のバイキング(東京都台東区)がお披露目したのが、この「マジシャンズデッド」というゲームだ。ハンドパワー多人数対戦アクションというジャンル名が示すように、操作に使うのはジョイスティックと自分の手。スティックでキャラクターを動かした上で、自分の手を振り、非接触型のモーションセンサーを通して動きをキャラクターに伝え、超能力や魔法といった異能の力を発動させる。

 デモンストレーションでは、バイキング代表取締役の尾畑心一朗さんがプレーを披露。火焔やバリアといった技のほか、地面に触れて魔法の力を仕込んでおいて、罠のように発動させる遊び方も見せていた。遊んでいるうちに、だんだんと自分がスクリーンの中のキャラクターと一体化していく感覚を味わえそうだ。

 自分の動きをゲーム内のプレーに反映させるだけなら、任天堂のWiiの時代から家庭用ゲーム機でも実現されており、マイクロソフトのKinectのように、体の動きを読み取る高性能なセンサーも普及し始めている。ただ、ゲームセンターの店頭で仲間たちとプレーすることで得られる喜びは格別。男性なら格好良く腕を振り、女性なら可愛らしく腕を振ることで、キャラクターになりきった感じを見ている人とともに楽しめる。

 「マジシャンズデッド」では、キャラクターデザインとキャラクターデザインのディレクションを、対戦格闘ゲーム「ストリートファイター2」や、テレビアニメ「ガンダムGのレコンギスタ」に携わったあきまんさん、「HEROMAN」「ベイマックス」のキャラクターデザインで知られるコヤマシゲトさんが担当。ほかにも著名なクリエイターがキャラクターデザインとして参加している点も人気を呼びそうだ。

 JAEPO2016には、には、コナミデジタルエンタテインメント(東京都港区)やセガ・インタラクティブ(東京都大田区)、タイトー(東京都新宿区)といったゲーム会社がそろって出展。従来からあるスティックやボタンとは違ったコントローラーを使うゲーム機を並べて、体を動かして遊ぶ業務用ならではの楽しさを感じさせていた。

 目の前にあるクリアパネルに出てくるボタンを操作するのは今までどおり。コナミデジタルエンタテインメントが送り出す音楽ゲームの「おといろは」は、左右にカーブの形をした装置がついていて、そこに設置されたスライダーをはね上げるような操作をしてゲームを進めていく。

コナミデジタルエンタテインメントといえば、BEMANIシリーズで実際にダンスを踊ったり、ギターやドラムを演奏したりして競いあう音楽ゲームのジャンルを作ったともいえるゲーム会社。「おといろは」では和風の世界観を打ち出し、収録楽曲も和風のものを用意して新しい音楽ゲームの世界を作る。同社では、新型の音楽ゲームとして「ノスタルジア」を展示。こちらはピアノの鍵盤のようなコントローラーがついていて、ピアニスト気分でクラシック曲やBEMANI楽曲を楽しめる。

 VR(バーチャルリアリティ)と呼ばれる技術を使った業務用ゲーム機の可能性も広がっている。ナムコ(東京都港区)とバンダイナムコエンターテインメント(東京都港区)が東京・お台場に10月中旬までの期間限定でオープンした「VR ZONE Projet i Can」では、目を覆うように装着して、自分がそこにいるような感じにさせるVRヘッドマウントディスプレイを使ったアトラクションを提供している。

 ロボットを操縦して空中を飛び、敵のロボットを迎え撃ち、飛んでくるミサイルを避けて進む「アーガイルシフト」、地上200メートルの空中に伸びた細い板の上を歩いて渡り、先端にいる猫を助けて戻ってくる「高所恐怖SHOW」などを用意。「アーガイルシフト」は、ロボットアニメを見て憧れ、「電脳戦機バーチャロン」のようなゲームでスクリーン越しに楽しんだロボットの操縦を、自分が本当に体験している気になれる。

 家庭用ゲーム機と接続して使う「プレイステーション VR」や、スマートフォンをはめこむ「Gear VR」のように、家などで手軽にVRを楽しめる装置もあるが、「アーガイルシフト」のようにロボットの動きと連動して動くシートや、スキー板の動きを再現させる装置が足下におかれた「スキーロデオ」のように、動く装置を使ってリアルさを増すVRアトラクションは、家では再現が難しい。

 スマホアプリのようにカジュアル化する一方で、体を使い、その動きを反映させてリアルさを出す業務用ゲーム機が増えていく“住み分け”が、ゲームの世界でも進んでいくことになりそうだ。