セブン&アイ、井阪体制に ヨーカ堂、そごう・西武めぐり新たな対立の恐れも
セブン&アイ・ホールディングス(HD)の経営体制をめぐる混乱は、24年にわたりグループトップに君臨した「カリスマ経営者」鈴木敏文会長兼最高経営責任者=CEO=(83)が退き、井阪隆一氏(58)がセブン&アイ社長に昇格する人事が26日の株主総会で承認され、決着した。ただ、不振が続く総合スーパーのイトーヨーカ堂やそごう・西武への対応で井阪氏と、大株主である米投資ファンドとで考えが異なる。改革の具体化に伴って新たな対立も懸念される。(永田岳彦)
「業態論で全てがダメとは考えていない。地域での役割や存在意義を精査していきたい」。26日、株主総会終了後の記者会見で井阪氏は、イトーヨーカ堂やそごう・西武の改革についてこう考えを述べた。
また、強力なトップダウン型の経営体制だった鈴木氏の下では「本音で議論できない面もあった」として、集団指導体制で進める中、セブン&アイと主要子会社とが定期的に話し合う場を設ける考えも示した。
鈴木氏が推し進めた店舗とインターネット通販を融合させるオムニチャネルについては「リアル店舗だけでは取り残される。真っ正面から取り組む」と述べ、基本的に路線を踏襲する考えだ。
ただ、入社からコンビニエンスストア事業のみに携わってきた井阪氏のグループトップとしての経営手腕に、総会に参加した株主からも「未知数」との指摘が多く出た。井阪氏を解任するとした鈴木氏を支持した役員も残っている。
また、鈴木氏による世襲の動きを批判していた米投資ファンドのサード・ポイントは、不採算店40店を閉鎖するとするイトーヨーカ堂の改革では不十分だと指摘。そごう・西武もグループからの早期切り離しを求めている。
井阪氏は新たな構造改革案とグループ成長戦略を策定する考えも打ち出したが、鈴木氏の路線を基本的に踏襲する考えの井阪氏と、経営資源をコンビニに集中させるよう求めるサード・ポイントの描く未来は異なる。
井阪氏が進める改革の具体化やスピードに対して、サード・ポイントは揺さぶりをかけてくるのか。さらには鈴木氏を支持するグループが造反の動きに出るのか。井阪体制は不安要素を抱えての船出となる。
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