鈴木修スズキ会長、最後の大仕事 CEO返上で引退後の新体制を構築へ
スズキの鈴木修会長がCEO職の返上を決めた。燃費測定の不正問題が契機となり、鈴木会長の“ワンマン”態勢から、会長引退後の「集団指導体制」を見据えた改革へ背中を押された格好だ。ただ、鈴木氏は代表権を持つ会長にとどまり、社内での影響力は行使される。鈴木会長に頼り切った経営から脱却し、新たな体制に移行できるかが焦点となる。
「組織が大きくなって、私自身が1人で経営を見ることは不可能になった」。鈴木会長は8日の記者会見でCEOを退く理由をこう述べた。鈴木会長は、1978年からほぼ一貫して経営トップを務め、強力なリーダーシップでスズキを世界10位の自動車メーカーに育てた。しかし、企業規模が大きくなるにつれて、会長1人で全ての業務に目を配ることが難しくなり、「結果的に燃費不正問題が出たのもその現れ」(鈴木会長)と認めた。
鈴木会長の後任のCEOは8人の取締役から選ばれる見通し。鈴木会長は今後の経営判断について、新CEOの決定に従うと説明した。ただ、新たな経営体制の確立に向けては課題も山積する。一つが不正問題で毀損(きそん)したブランドの回復だ。
スズキの不正は、三菱自動車と違い燃費の水増しはなかったが、5月の国内軽自動車販売は前年同月比15.4%減。6月も減少基調が続くなど影響の長期化も懸念されており、失った信頼の回復は急務だ。
さらに最大の課題は、鈴木会長の「トップダウン」態勢から集団指導体制による「合議制」に移る過程で意思決定の早さといったスズキの“らしさ”が失われかねないことだ。この課題について8日の会見で鈴木俊宏社長は「全体最適、将来最適の形を早い段階で決めるので(意思決定の速度が遅く)なるわけではない」と反論した。
ただ、カリスマ経営者から新体制への移行が容易でないのは日本の企業史からも明らかだ。鈴木会長は会見で、今後の経営への関わり方について「後ろに下がって皆がチームでやっていく方向が大丈夫かを見極める」とした。新経営体制の確立に向け、どう道筋をつけるのか。それが、鈴木会長の最後の大仕事になる。(今井裕治)
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