シンクロ代表支えた日本の技術力 メダル獲得に貢献、水着製作で伝統技法活用
リオ五輪日本勢による連日のメダルラッシュに沸くリオデジャネイロ五輪。第12日の16日には、シンクロナイズドスイミングのデュエットで乾友紀子(井村シンクロク)三井梨紗子(東京シンクロク)組が、シンクロ日本代表として2大会ぶりの銅メダルを獲得した。
2人を含むシンクロの日本選手らが本番で着る水着を手掛けたのが、デサントと東レ。アテネ五輪の競泳800メートル自由形で優勝した柴田亜衣選手ら競泳陣も含め、数々のメダリストを支えてきた「日の丸連合」だ。かつてシンクロ日本代表を6大会連続で表彰台に導いたメダル請負人で、3大会ぶりに復帰した井村雅代コーチの厳しい注文にも的確に対応。見事、今回のメダル獲得に貢献した。
極限まで軽量化
「とにかくすごいこだわり。覚悟はしていたが、あれほどまでこだわるとは…」
デサントが展開する「アリーナ」ブランドのチーフデザイナーで、今回の水着製作を担当した秋田祐作さんは、井村コーチの印象を振り返る。日本水泳連盟が同社に正式発注したのは今年2月。最初に井村コーチの要望を聞き、その後何度もチェックを受けながら、約4カ月で完成にこぎ着けた。
従来のシンクロ水着は、大部分で3~4枚の生地を重ねていた。これに対し、今回はごく一部を除いてほぼ1枚で仕上げられている。井村コーチから、選手が少しでも動きやすいよう、極限まで軽量化してほしいと求められていたからだ。
だが、枚数を減らすと濡れたときに透けやすくなる。強度も落ちてしまう。そこで採用したのが、東レの特殊素材だった。
この特殊素材は、ポリエステル原糸を高密度に編み上げたものだ。原糸の断面を見ると2層構造になっていて、“芯”にあたる方はセラミックを混ぜて光を通しにくくしてある。複数重ねる場合と遜色(そんしょく)ないほど強度も高い。シンクロは、選手が別の選手を抱え上げるなど激しい動きを伴うが、滑ってつかみ損ねたりしないよう、表面の手触り感にも気を配った。
見た目でも新機軸
一方、見た目という、もう一つの重要な要素でも新機軸を打ち出した。
「今回は屋外プールで競技が行われる。太陽光にも負けない色を出してほしい」。井村コーチは、秋田さんらにそんな注文も出していた。
強い太陽光の下でも鮮やかで深みのある色にするにはどうすればいいか。行き着いたのが、着物を染めるのに使われる「手捺染(てなっせん)」だった。板張りした生地に手作業で染料をなでつける伝統技法だ。
インクジェットプリンターを使うデジタル印刷と違い、手捺染はより多くの染料が生地表面につきやすい。微妙な濃淡や、細かな調色にも対応できる。実際に色をつけるにあたっては、新潟の工場に協力をあおいだ。
秋田さんらは、ほかにもアリーナの水着などで培ったノウハウを生かしつつ工夫を重ねていった。水着は種目別にデザインの異なる4パターンを用意したほか、個々の選手の体形に合わせてカスタマイズもしてある。水着を手にした井村コーチは「今までで一番軽い!」とほめてくれた。
苦労の結晶ともいえる水着だが、市販化の予定はなく、売り上げに直接つながるわけではない。それでも秋田さんは「技術の蓄積にもなるし、何より選手を支えたという勲章がもらえる」と喜ぶ。19日からは女子チームの競技も始まる。デュエットに続くメダル獲得の期待が膨らむとともに、競技者を支える日本の技術力への注目度も高まりそうだ。(井田通人)
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