神経すり減らしたスマホ開発陣 ポケモンGO熱狂の裏で…検証作業に奔走
7月6日に米国などで配信が始まってから1カ月間で、日本を含む全世界でのダウンロード数が約1億3千万回に達したスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO(ゴー)」。ギネス世界記録に認定されるほどの爆発的な人気だが、ダウンロードをめぐり日本ではちょっとした“騒動”があった。経営再建中のシャープでは、同社製スマホの一部機種でダウンロード障害が起き、開発スタッフが対応する全機種で3匹捕獲し動作確認。非対応機種も販売する格安スマホ「マイネオ」もブログで対応機種を明示し顧客対応にあたった。携帯各社やメーカーは、突如出現した“モンスター”アプリに右往左往した。(石川有紀)
全機種で「検証」
先行配信された米国などで人気が沸騰したこともあり、日本国内でも期待が高まっていたポケモンGO。7月22日午前10時に事前予告なしでリリースされ、東京や大阪など都市部では直後から回線が混み合いダウンロードや起動がしにくいトラブルも起きていた。
そんななか、アプリ開発会社ナイアンティック(米国)が対応要件としている仕様(Android 4・4以降、RAM2GB以上)を満たすスマホにもかかわらずダウンロード障害が発生し、ネット上で「遊べない」と批難の集中砲火を浴びたのがシャープ製スマホだった。
顧客の声を受けて、シャープはただちに検証作業を開始。22日午後6時にはほぼダウンロード可能となったが、NTTドコモの1機種をめぐってナイアンティックなどとの検証は続いた。
「弊社のポケモンGO検証は、全機種でダウンロード→起動する→3匹捕まえる、を行っております」
8月3日、シャープ公式ツイッターは「ポケモンGO」に対応する全機種で遊べるようになったことを報告して「やきもきされたお客さまにとっては、決して迅速だったとは言えません」と謝罪。地道な動作確認で検証に当たった広島工場のスマホ開発チームを「さぞかしモンスターボールの扱いが上達したかと思われます」と紹介しながら、理解を求めた。
NTTドコモは7月29日の決算説明会で通信状況について「衛星利用測位システム(GPS)の位置測定のために局所的に通常より混雑している」としたが、設備増強が必要なほどではないと説明。ダウンロード障害についても「顧客からの問い合わせはあったが、個別アプリの動作対応はスマホメーカーで対応しており、原因は不明」(広報)とコメントした。
ドコモは、シャープ以外のスマホメーカーでダウンロード障害の情報は把握していないとしており、原因はアプリ側の問題だったとみられる。
「格安」でも遊べる?
一方、ダウンロード障害はなかったが、全機種で“捕獲作戦”を実施したのは格安スマホの「マイネオ」を展開するケイ・オプティコム。ポケモンGOのリリース3日後の7月25日には自社サイトに検証記事を掲載し、ダウンロード可否と現実世界のなかにポケモンを“出現”させるAR機能の使用可否の一覧表も公開した。
ケイ・オプティコムの広報担当者は「社会現象でもあり、顧客の関心が高いので独自検証した」と説明する。これから発売する予定の機種も検証対象にしており、「買ったものの、遊べなかった」というトラブルを事前に防ぐねらいもあった。
同社が検証した結果、一部の機種でメモリ容量不足によって動作が重くなるなど影響があった。だが、懸念されたデータ通信量については「通信速度を抑える節約モードでも問題なく遊べる」と結論づけた。
こうした検証記事にユーザーも敏感に反応し、コメント欄で自身の機種の動作状況を「固まるが再起動ですぐ直る」「ピーク時はバトル(ポケモン同士の対戦)ができないことがある」などと情報交換している。
米アプリ開発会社のナイアンティックは8月5日、「さまざまな第三者がサーバーへ不正なアクセスを試みることで、ゲームの運営がさらに難しくなるばかりでした」とホームページでコメントを発表。配信開始から1カ月間に不正アクセスでサーバーに負荷がかかり、配信開始の遅れや新機能の開発で影響を受けたことを明かしている。
世界が熱狂するポケモンGOの舞台裏では、スマホメーカーや携帯各社、開発会社などが神経をすり減らしながら通信環境を支えているのだ。
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