攻めるシャープ、守る東芝? 外資傘下入りした“日の丸家電”の戦略二分
今年、“日の丸家電”が外資の軍門に下る動きが相次いだ。日本を代表する家電ブランドのシャープに加え、東芝の白物家電子会社も外資傘下で経営を立て直すことになり、8月にそれぞれ新体制をスタートさせた。いずれも親会社のグローバルな部品調達や販売網を活用してコストダウンを図り、海外市場で競争力を高めるというシナリオを描く。ただ白物家電や調理家電は、食文化や生活習慣が異なる海外では、現地ニーズに合わせた開発も欠かせない。築き上げたブランドイメージも大切にしたい。多くの課題を背負っての“船出”だ。(石川有紀)
開発から海外目線
台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業の出資を受け、始動した「新生シャープ」。鴻海グループ副総裁でもある戴正呉(たい・せいご)新社長は「早期黒字化を実現し、輝けるグローバルブランドを目指す」と題したメッセージを出し、経営再建に本格的に乗り出した。
デジタル化の進展による新興国メーカーの台頭で、国内の家電産業が曲がり角を迎える中、シャープは今年も例年通り、家電の新製品を発表した。
9月2日、平成16年の発売以来累計200万台を売り上げた人気商品のウオーターオーブン「ヘルシオ」の小型版「ヘルシオ グリエ」の発売を発表。機能や操作もシンプルにして、価格も従来型の半額以下に抑えた。総菜を家庭で温め直して食べる文化がある中国や東南アジアなど海外展開も視野に、1年半かけて開発したという。
家電担当の沖津雅浩取締役は「開発段階から海外市場を念頭に置いた商品作りを指示している」と話し、独自技術を活用しながら健康をテーマに家電新製品を展開していきたい考えだ。
小型化によって、日本の高価格・ハイスペック家電の代表格ともいえるヘルシオシリーズを、海外市場に浸透させることができるだろうか。シャープロゴと同じ「フレッシュな赤」(担当者)の新製品で再起をかける。
「守り?」の東芝ライフ
東芝の白物家電事業会社「東芝ライフスタイル」は、中国家電大手の美的集団の傘下に入った。8月に東京都内で開いた記者会見では、続投する石渡敏郎社長がプレゼンテーションに立った。一方、会長に就任した美的の顧炎民副社長は前面に出ることはなく、ビデオレターで登場しただけだった。
石渡社長は、国内の開発や製造、アフターサービスが変わらないと説明。「東芝ライフスタイルがブランドやロゴを管理していく」と“不変の東芝”を強調した。
商品面でも、美的が持つ容量300リットル以下の冷蔵庫や小型の電子レンジなど東芝ブランドにはないラインアップを増やすとしたが、「(日本で)美的を展開していく予定はない」(林南副社長)。国内では外資イメージを避け、現状維持、保守的な商品展開が続きそうな雰囲気もあるが、美的のバックアップを得てインドなど新興市場への進出を目指す。
ヒット生まれるか
外資による日本の家電事業再建の先行事例に、平成24(2012)年に旧三洋電機の冷蔵庫と洗濯機事業を引き継いだハイアールアジアのケースがある。同社は部分洗い用の手のひらサイズの洗濯機「コトン」やロボット型移動冷蔵庫など、日本の家電メーカーになかったユニークな製品開発で注目を集めてきた。
しかし今年1月、事業ブランドの「AQUA(アクア)」に社名を変更した。AQUAは旧三洋の洗濯機ブランド名でもある。家電市場で世界シェアトップを走る「ハイアール」ブランドだが、日本市場では「アクア」ブランドの力が大きいようだ。
同社は社名変更について「(アクアとハイアールの)ダブルブランド戦略でブランド価値を高める」と説明している。
外資のもとで再建をめざす国内家電にとって、親会社の戦略の中で世界的なヒット商品を生み出すという挑戦も課される。その一方で、これまで築き上げたブランドイメージの維持という“責務”もある。
「二兎を追うものは一兎をも得ず」。かつての家電王国・日本の意地をかけて、そんなことにならぬよう願いたい。
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