J1、1ステージ制復活が導く未来 理事会できょう決定
スポーツbizサッカーの日本代表は厳しい立場にある。6大会連続出場を目指すワールドカップ(W杯)ロシア大会最終予選、1戦たりとも落とせない状況が続く。
欧州の強豪国でも連続出場は難しい。日本の連続出場は称賛されていい。アジアの実力といってしまえばそれまでだが、代表候補たちが欧州のリーグやJリーグで蓄えた技量が背景にあったことは間違いない。
◆“本来の姿”へ
今回の苦戦は、他のアジア諸国の実力伸長にある。負傷者が続出した問題もあろう。もう一つ、Jリーグの若手選手の突き上げが乏しく、ここ数年、代表選手の顔ぶれに大きな変化がなかったことも挙げられよう。
Jリーグは、来季から通年1ステージ制に戻す。2季続いた前後期2ステージ制と年間王者を決めるチャンピオンシップ(CS)を廃止、年間34節を戦う。J1、J2、J3合同実行委員会で合意に達し、きょう12日の理事会で正式決定される。
2ステージ制は、苦肉の策である。2008年を頂点に減少傾向をたどる観客動員に歯止めをかけるため、盛り上げ、注目の機会をつくる。そして、新たなスポンサー獲得とテレビ放送権契約による計10億円ともいわれる収入が目的であった。
しかし、日程は過密化しステージ間の節目が消え、とりわけ11月はCSに加えてアジアチャンピオンズリーグ(ACL)決勝やカップ戦などが集中、選手の負担は増した。他方、CSに出場できないチームは4カ月近く公式戦がなくなる状態となった。タイトル争いや競技の公平性への疑義ももたれたが、それでも財源の前に沈黙を余儀なくされていたのが現実である。
こうした状況を打破したのは動画配信大手の英パフォーム・グループとの放送権契約だった。小欄でも契約前夜の模様をお伝えしたが、契約条件は予想を上回る10年約2100億円。この資金が本来の姿を取り戻し、新たな改革への取り組みを可能にした。
Jリーグの村井満チェアマンは合同実行委員会終了後、構想の一端を披露した。
成績上位クラブへの賞金を増やす強化分配金制度、J1からJ2に降格するクラブに支払う救済金制度、さらに外国人選手登録規定の緩和にYBCルヴァン杯での2020年東京五輪世代選手枠の設置など、今後に向けた方向性も練られている。
また、過密日程が緩和されることから、夏場に中断期間を設けて欧州のクラブを招いた親善試合の実施を図るなど、クラブの国際力向上に向けた取り組みを行う。これをJリーグの実力向上、日本代表の革新に結びつけたいというのが村井チェアマンの本音だろう。
◆ファン開拓が急務
英プレミアリーグの放送権料は2016~17年シーズンから3季で95億ユーロ(約1兆982億円)、独ブンデスリーガのそれは16~17年シーズン8億3500万ユーロである。Jリーグの放送権料は比べるべくもないが、それでも、2100億円という放送権料が今後の改革を進める基盤となる。
ということは、逆に放送権料がなくなれば改革が止まり、元のもくあみになりかねない。より一層の魅力アップ、付加価値が必須となる。村井チェアマンは「関心を高めていく努力は必要」と話し、わかりやすさを念頭に情報発信を強調した。
前回取り上げたプロ・バスケットボール男子のBリーグは、通信大手のソフトバンクと推定4年総額120億円の契約を結んだ。ネット放送権料込みのスポンサー契約である。
Jリーグの契約相手、パフォーム・グループもまたネットへの動画配信を主としている。いずれも想定するのは、コアなファンより若いネット世代。彼らに試合の面白さを伝え、リピーターとしてファン層に取り込んでいく狙いがのぞく。
彼らがスタジアムやアリーナに足を運ぶようになれば、リーグ発展につながる。JリーグにしろBリーグにしろ、入場料収入を大きな財源としており、ファン開拓は急務とされる。
ただ、放送権契約が現実を打破してくれるわけではない。選手の技量を高め、試合の質を上げていく必要がある。日本代表の質の向上にも結実しよう。
プレミアリーグもブンデスリーガも、多額の放送権収入を選手と試合の質の向上に充て、さらなる人気と収入の増大をよんでいることを忘れてはならない。(産経新聞特別記者 佐野慎輔)
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