出光の月岡社長「創業者の出光佐三氏がご存命なら統合に賛成」 昭和シェルの亀岡社長「時期は延期するが将来は…」
出光・昭和シェル経営統合延期 会見詳報(1)来年4月1日予定だった合併について、延期を決めた出光興産の月岡隆社長と昭和シェル石油の亀岡剛社長が、13日午後5時過ぎから東京都千代田区の経団連会見で記者会見を開き、経緯と今後の計画などを説明した。
会見冒頭での両トップの説明は次の通り。
■出光の月岡社長
初めに、創業家との協議に関わる一連の騒動に対し、両社のすべてのステークホルダー、特に昭和シェル石油関係の皆様に多大な迷惑をかけていることを、心からお詫び申し上げる。私共出光興産と昭和シェル石油の経営統合は、今なお両社の持続的成長のために最適な組み合わせで、最善の策と確信している。しかし残念ながら、大株主の創業家の同意が得られておらず、建設的に進める見通しが立っていない。新会社は、心から祝福されてスタートするのが理想的と思っている。当初は賛同いただいていた筆頭株主の翻意に直面したことで、当初は「方針通り進めてよいか」と相当悩んだ。そんな折、全国の販売会社の皆様から、心配の声と叱咤の声を数多く頂いた。家族同様のつきあいをしている販売店の声はとても重く受け止めなくてはいけないと思った。今般、創業家を筆頭に各ステークホルダーの皆さんとの協議に十分な時間を確保する必要があると判断し、経営統合時期の延期を決めた。
両社はこれまで、30以上の分科会でオープンな議論をし、ベストな統合のあり方を真剣に検討してきた。こうした入念な準備を通じて両社従業員の間には「同じ会社の仲間」としての一体感が形成されつつある。「日本初の新しいエネルギー会社、真のリーディングカンパニーを作れる」との確信と、確かな手ごたえを感じている。時期を遅らせてでも、確実に統合をに実現すべきとの判断で、両社の経営陣が一致した。
現在、創業家側は「拒否権」を持っていると主張しており、それを崩す手立てを講じてまで、大株主の理解をいただけないまま統合を成立させることは、新会社の安定経営にとってのリスクとなるため、本末転倒だ。
今回あえて統合時期を明示しなかったのは、私共から創業家へのメッセージだ。相互に十分な議論を尽くすことが重要であり、期限を区切ることは適切でない、と判断した。創業家との協議はこの3カ月、あらゆる手立てを尽くしてきたが、7月11日以降、正式な面談の機会を作れていない。また出光昭介名誉会長には、販売店組織から何度も書簡が送られているものの、返答がないと聞いている。経営陣と創業家の協議が進まないため、すべてのステークホルダーの利益が脅かされている。(創業家側からは)当社が単独で企業価値を高めるための提案を頂いていないし、統合への反対理由には現実に即さない点が多いため、説明しても理解を頂けない状況が続いている。統合に当たって創業家が抱いている不安について一つ一つ丁寧にお話しさせていただき、一刻も早く統合協議を進めることを、切に願っている。
今問われているのは、創業精神に則って「守るもの」「変えてはいけないこと」を明確にすることだ。それ以外は、時代に合わせ柔軟に変えていかないと、生き残りができない。10年前、上場した際も同じような議論をしたことを思い出す。
日本にエネルギーを安定供給することは当社創立以来のミッションであり、決して変えてはいけないと思う。その手段として経営統合を決断したが、他社との経営統合が「変えてはいけないもの」になるのかどうか、創業者の出光佐三氏がご存命なら必ずや賛同いただけるのではないかとの結論に至った。両社は生い立ちこそ異なるが、根底の価値観には共通点が多く、水と油の関係ではない。加えて当社の社風には普遍的な良さがあり、統合後も維持されると確信している。
出光昭助名誉会長の薫陶を受けてきた立場として、こうしたことを申し上げるのは心苦しいが、当社が上場企業として様々なステークホルダーとの関係の上に成り立っていること、全世界の人々の共同利益の向上につながることを是非理解していただきたい。そして直接の協議に応じていただきたい。創業以来、当社は何度も困難に見舞われ、そのつど歯を食いしばって一人一人が、そしてみんなで乗り越えてきた歴史があり、そうした精神こそが創業者が残してくれた最大の財産だ。
昭和シェル石油様と対等の精神で統合を進めたいとの考えはいささかも揺らいでいない。昭和シェル石油のステークホルダ-の不安を取り除くべく、誠心誠意説明していきたい。
■昭和シェルの亀岡社長
昨年7月30日に統合協議の発表会見を開いた。その際に申し上げたのは「我々石油業界が一番に考えなくてはならないことは日本国民へのエネルギー安定供給である」ということだ。そのためにはしっかりした財務基盤が必要であり、需要が右肩下がりの中、安定した基盤を作るためには「経営統合がベスト」だとの結論に至ったわけです。両社のシナジーについても、精油所の立地や強み、マーケティングなどいろいろな切り口からみて、ベストパートナーだという考えは全く揺らいでいない。従って、統合時期は延期するが、統合に向かって一生懸命やっていくことは微動だにしない。昭和シェルにはロイヤルダッチシェルという大株主がいる。株主の理解を得ながら経営を進める重要性は、身にしみるほどわかっている。今回、出光の大株主から十分に理解を頂いていないということで、ある程度の時間を取って理解を頂くことが新会社のためになると考え、こうして発表することにした。
出光の大株主の皆さんから、昭和シェルについて「こういうところがあるので統合はよくない」と何度か意見を受けている。(それに対して)私共から述べたことはないので、この場で少し話したい。大きく3点ある。「労組」「イランとサウジアラビア」「企業文化」の問題だ。
まず「昭和シェルには労組が7つもある」といわれるが、それは、関係会社の5労組も含めて有価証券報告書に記載している。出光も同様に、関係会社に11の労組があるそうだ。私共の主たる労組の理念は、「会社の発展と社員個人の成長を成し遂げ、ウィンウィンの関係を作る」ことが理念だ。実際、私共と労組は年2回、経営協議会を開いて、今後の会社の発展に向けた協議を労使一体で民主的に行っている。あるいは、会社の製品の販促運動を労組発でやってくれたりしている。私自身、若い頃は中央役員をしていろいろな勉強をした。他の経営陣にも労組出身者が多い。従業員を大切にすることが社業発展に資すると身にしみてわかっているからこそ、当社は離職率が低く、ダイバーシティの推進につながっている。昭和シェルの経営理念は「私たちのエネルギーで未来を元気にする」だ。それは、組織や個人の持つ「元気」で未来を元気にすること、つまり「社員ひとりひとりがいかに生き生きと働くか」が重要であり、そうでなければ経営理念は達成できない。昨年の発表以来、出光と何度も話をしてきたが、「人間尊重」や「社会貢献」といった出光の理念とは相通じるものが多い。
次に「イランとサウジ」の問題だが、昭和シェル石油の株式を、サウジアラムコ社が15%保有している。だからといって、昭和シェルにとって不利益なサウジ原油の購買は一切していない。当社の利益につながる取引しかしていない。イランについてだが、今年1~6月に日本に入ってきたイラン原油のうち55%が昭和シェル石油経由だ。イランの国営石油会社は、各社と価格交渉するのではなく、アジアのチャンピオン企業と年4回交渉している。それは歴代、昭和シェルが行っている。当社とイランの関係も非常に長い。また、原油調達のダイバーシティについても、中東だけでなくコロンビアやベネズエラから輸入しているし、グループ会社の東和石油は、通常は精製できない重質油も処理できる。また中東の油についても、ロシア・ナホトカ経由で3日で日本に持ってこられる。すなわち、中東だけでなくいろいろなところから持ってこられるわけだ。
最後に「文化の問題」だが、両社とも100年以上の歴史があり、日本のエネルギー安定供給に尽くしてきた。シェルが日本に来たのは1900年だ。各国にシェルグループの会社があり、昭和シェル石油は他国でビジネスができない。すなわち日本の皆様がビジネスのパートナーであり、当社は116年間、日本の皆様にコミットしてきた会社だ。もちろん当社だけでなく様々なパートナー、特約店と共に油をお届けしている。
我々の特約店は全国495店あるが、50年以上の店が202、100年以上の店も33ある。いかに長く日本でビジネスを行い、特約店と一緒に消費者の満足をいただけるよう尽くしてきたかの証だ。
統合の発表以来、いろいろな切り口で経営分科会を開き、経理やIT、ガバナンスなど色々なことを話し合ってきた。統合コンサルタントを雇っているが、「これほど建設的な統合協議ができている分科会は珍しい」とほめられた程だ。ぶつかり合う局面でも「新会社のために」と一生懸命話し合っている。社員も管理職も同じだけ集まり、お互いの違いや、未来に向かってのビジョンを話し合うキャンプを開いた。そこでは違いと共に共通点を見つけ、新しい会社のために一丸で、と心を一つにした。合併が目標ではない。合併によってより強い会社を作り、日本国民、世界の皆様のためにエネルギーを安定供給していくことが目標だ。株式会社なので、株主の皆様にしっかりご理解いただき、サポートを頂いて、統合への歩みを続けることが重要だ。
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