日立 カメラ新技術、レンズなしで動画可能に 撮影後もピント合わせ

 
日立製作所が試作したレンズレスカメラ。レンズなしで動画を撮影できる

 日立製作所は15日、レンズなしで動画を撮影できるカメラ技術を開発したと発表した。撮影した後でも、好きな箇所にピントを合わせられることも特徴。2年後をめどに実用化し、モバイル機器やロボット、自動車など、幅広い機器や用途で採用を目指す考えだ。

 開発した技術は、レンズの代わりにフィルムを用いる。外側になるほど間隔が狭い同心円のパターンをフィルムに印刷し、画像センサーの上に重ねるように配置。フィルムの同心円パターンを、コンピューターにあらかじめ記憶させた同心円と重ねると生じる縦縞(モアレ縞)を利用しつつ画像処理を行う。

 画像センサーは、平面だけでなく、奥行き方向の情報も記録できる。記憶させた同心円の倍率を変えながら画像処理を行えば、撮影後でもピントを合わせられるという。

 スマートフォンなどのカメラは、一般的に複数のレンズを重ねて用いている。日立では、それらが全て不要になるためコストダウンが見込める上、薄型軽量化も可能としている。

 レンズレスカメラは、米ライス大学や半導体開発会社の米ラムバスが開発しているが、画像処理に膨大な計算が必要な場合が多い。一方、撮影後のピント合わせができるカメラはライトフィールドカメラと呼ばれ、米ライトロなどが製品化しており、特殊なレンズが使われている。今回の技術は両方の機能を同時に備えるほか、モアレ縞を活用することで複雑な画像処理方法が不要になるため、処理速度を従来のレンズレスカメラに比べて300分の1に短縮できるという。