オリジナル家電を多品種少量生産 UPQ・中沢優子代表取締役CEO

 
「二子玉川蔦屋家電」の店頭に初めて並んだUPQの製品=2015年9月、東京都世田谷区(UPQ提供)

 日本のお家芸であり、メード・イン・ジャパンの代名詞ともなった家電製品だが、近年は円高と新興国メーカーの台頭で押されっぱなしだった。この状況で「日の丸家電」の新たな挑戦を続けているのがUPQ(アップ・キュー)の中沢優子代表取締役CEO(最高経営責任者)だ。

始まりは携帯電話

 昨年8月、企画を始めてわずか2カ月で17種類、24製品を発売し、世間を驚かせた。その原点が携帯電話だった。

 中沢代表は「日本の携帯電話機は何でもかんでも機能を詰め込んだが、UPQは逆に詰まっていたものを1つずつ外してみようと考えた」という。

 携帯電話は、中学生から使っていた中沢代表にとって相棒のような存在。大学卒業後、カシオ計算機に入社した理由も「携帯電話を作りたい」。アルバイトで販売経験もあり、こんな携帯電話だったら売れるというアイデアも持っていた。

 カシオでは携帯電話の内蔵カメラで自分が満足のいく写真映りで撮れる「美撮り」モードを考案。その機能を載せる携帯電話の企画を担当したが、2012年、同社が携帯電話事業から撤退したのを機に退社した。

 それでも「絶対、また携帯電話を作れるときが来る」との確信があった。カシオに入社した当時、読みあさっていた総務省のリポートに通信会社を自由に選べるSIMロックフリー携帯電話が登場すると明記されていたからだ。ただ、退職時はまだ実現していなかった。そこでスキルアップを目的に、東京・秋葉原でカフェを開く。

 オリジナルのケーキなどでどうやって人を集めるのか、売れる商品をどう作るのかといったマーケティングを実践する場となった。UPQのビジネスにもつながる面があるという。

 14年に入って3Dプリンターが普及し始め、ものづくりベンチャーの立ち上げを支援する施設なども整ってきた。いつの間にか若い女性の間でも「格安SIM」という言葉が日常的に使われるようになる。「時代が来た。すぐものづくりの現場に戻りたい」。オリジナル家電ブランド「UPQ」誕生に向けて中沢代表は一気に動き出す。

期待に応えたい

 多品種少量生産を志向するUPQが目を付けたのが、経済の減速感が強まった中国だ。オーダーメードで作ってくれそうな工場を片っ端から調べ、香港の専門見本市で名刺交換し、その翌日に工場を見せてもらった。以降、日本と現地の工場とを行ったり来たりの日々が続く。

 最近、65型4Kディスプレー100台を「二子玉川 蔦屋家電」の店頭と通販サイトで限定販売した。「販売店と協力すればどんなものが作れるかを試したかった」。消費税別配送料込みで14万9000円の価格設定が消費者に評価され、通販サイト分はわずか6日で完売した。

 中沢代表は「安全、安心に最大限の注意を払ったうえで、多くの人に期待してもらえるようなことを常に意識して開発をしていきたい」と話す。高機能だけに頼らず、売り方、作り方、見せ方などで工夫を凝らせば、「日の丸家電」はこれからも世界を舞台に戦えそうだ。

【プロフィル】中沢優子

 なかざわ・ゆうこ 中央大経卒。2007年カシオ計算機に入社、12年退社。カフェ店経営などを経て、15年7月UPQ(アップ・キュー)を設立し、現職。32歳。東京都出身。

【会社概要】UPQ

 ▽本社=東京都文京区湯島3-14-9 湯島ビル4階

 ▽設立=2015年7月

 ▽資本金=100万円

 ▽従業員=6人

 ▽事業内容=独自のデザインに基づいた家電製品の企画、販売など