清水建設社長・井上和幸さん(60)

2017 成長への展望

 ■技能労働者育成 研修施設が4月稼働

 --社長就任から9カ月を振り返ると

 「業績の数字だけ見ればうまくいっているが、絶好調とはいえない。技能労働者の入職が減り、担い手不足の懸念があるからだ。営業利益率がようやく6~7%まで向上したが、製造業でみれば最低ラインだ。現場で働く技能労働者に適正な給料を払える産業にしないと。受注環境がいい時代だからこそ浮かれず、次の時代のために何をすべきかを考えていく」

 --技能労働者を増やす具体策は

 「協力会社への支援が中心。例えば『多能工化』。1人で複数の仕事ができれば繁閑の波を平準化できる。4月に研修施設を本格稼働させ、協力会社に活用してもらう。実物大模型を使って施工ミスを見つけ出す技術を習得してもらったり、ものづくりへの執着、やる気の醸成につなげたり。大きく期待している」

 --ITやロボットを活用した省人化も重要だ

 「昨年、米シリコンバレーに本拠を持つベンチャーキャピタルが組成したファンドに出資した。有望なベンチャーには直接出資し、技術を取り込みたい。そのためには目利きができ、情報を取れる人材が必要だ。社員を現地に派遣し、社外とのコラボを広げていく」

 --今年の事業環境をどう見通すか

 「国内建設投資は微減だが、51兆円台とみられる。2020年までは同規模で推移するだろう。災害への備えや都市再開発のニーズが減る要素はない。工事の増加で夏頃から労務費が上昇しそうだが、自助努力で吸収できるだろう。施工能力には限りがあり最高益の更新は難しいかもしれないが、巡航速度でいきたい」

 --今年、経営で重視するテーマは

 「現在の“湯加減”は心地良いが、長い目で見れば国内の建設投資は減っていく。収益源の多様化と、そこへ向けた改革が急務だ。例えば顧客向けの電力小売りを昨年始めたが、『建てた後』のマネジメントを拡大したい。そうした新事業に対応できる人材の多様化も必要だ。女性だけでなく障害者や外国人も働ける職場を目指し、そのための改革を進めなくては」

 --海外比率の引き上げも

 「現在の約1割から2割に引き上げたい。その体制づくりに向け、新入社員の海外派遣に注力している。国内の仕事も忙しいが、踏ん張りどきだ。今、ベトナムで同国初となる地下鉄を工事している。インドネシアもタイもそうだが、国づくりの真っ最中にある市場を取りこぼす手はない。リスクを見極めながらミャンマーやインド、さらにはアフリカも視野に入れたい」

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【プロフィル】井上和幸

 いのうえ・かずゆき 早大院理工学研究科修了。1981年清水建設入社。執行役員建築事業本部第2営業本部長、常務執行役員名古屋支店長、専務執行役員同、取締役専務執行役員同を経て2016年4月から現職。東京都出身。