長時間フライトでもVRで「旅疲れなし」 JAL機で国内初の実験 移動時間の不満解消
観光業界で現実にはありえない世界に入り込んだ感覚が得られるバーチャル・リアリティー(VR=仮想現実)の技術を活用した旅行商品を企画する動きが広がっている。シニアの旅行需要が高まる中、疲れることの多い移動時間の娯楽を充実させる狙いで、長距離移動を快適にすれば、訪日外国人の需要を取り込めるとの狙いもある。
国内初の航空機実験
10日午前。成田空港を離陸した日本航空チャーター機内で、ビジネスクラスに乗り込んだ60~70代中心の乗客が、次々と目と耳を覆うVR映像の視聴機材を装着した。日航が企画した国内初となる航空機内でのVR実験だ。
実験に参加したのは阪急交通社が企画した「北から南までぐるっと巡る『火の国』アイスランド周遊9日間」のツアー客だ。日本からアイスランドまでは片道約13時間。人気ツアーだが、シニア層には移動時間の長さが不満材料だった。日航は「移動時間を充実させれば付加価値が高まる」(広報)と期待を寄せる。
渋滞による移動時間のロスが起きやすいバス旅行でも、VRを活用する動きが広がりつつある。東京急行電鉄グループの東急バスは、高級観光バス「東急トランセプレミアム」車内でVR映像を視聴する実証実験を5月に実施。参加者には好評で今後のバスツアー企画に生かす。
旅行そのものをVR化するという「究極の旅行疲れ防止」に舵を切る動きも。ANAホールディングス傘下の旅行会社、ANAセールス(東京都中央区)は、ツアーに参加できない両親や祖父母にVR機器を送り、子や孫である参加者が旅行先で撮影した360度カメラの画像などで、一緒に旅行しているような体験ができるサービスを9月から試験的に実施している。
欧米客の需要喚起
政府は2020年に訪日客数4000万人の目標を掲げるが、目標達成にはビザ(査証)発給要件の緩和や航空路線の拡充が進んだ中国やアジア地域以外からの誘客が不可欠。VRで娯楽が充実すれば長時間移動が必要な欧米客需要の喚起にもつながる。
阪急交通社と日航の実験などに参画したVRベンチャーのVRize(ブイアライズ、東京都港区)の中村拓哉最高執行責任者(COO)は「京都の紅葉など風光明媚(めいび)な日本各地の魅力をシーズンオフでも見せられれば、訪日客のリピーター獲得にもつながる。ツアー価格の上積みも可能だ」とメリットを話す。(臼井慎太郎)
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