JR大阪駅前の家電量販店、ヨドバシカメラマルチメディア梅田(大阪市北区)前には、すでに開店前に約250人の列ができていた。お目当ての商品を手に入れ、嬉々とした表情をみせる若者、親子連れ…。ちょうど14カ月前、平成23年2月26日早朝のことだ。
「どんなふうに見えるのか楽しみ」
「これからは3D(3次元)の時代ですよ」
購入者は目を輝かせながらこう話し、裸眼で3D映像を楽しめる任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」に未来を感じた。任天堂の岩田聡社長は「3Dの製品がまとまった数で一気に普及する機会」と話すなど社内も、業界関係者も新たな“任天堂神話”の始まりを予感していた。
それから11カ月。今年1月26日、任天堂は平成24年3月期の連結営業損益が初の赤字に転落する見通しを公表。翌日には大阪証券取引所で任天堂株が一時9910円まで売り込まれ、約7年10カ月ぶりに1万円を割った。
26日に発表された営業赤字は373億円。なぜ、ここまで不振に陥ったのか? 最大の元凶は、新たな成長の原動力と期待を寄せた3DSで「想定外が重なった」(証券アナリスト)ためだ。
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