とはいえ、日本製品に魅力がないということではない。森辺氏は「ブランド価値を前面に出せばうまくいく」と指摘。「2社の撤退で日本企業の間には『やはり中国でのEC事業は難しい』との受け止め方が広がるだろうが、『同じ轍(てつ)を踏まないように頑張ろう』という企業も出てくるはず」とみる。
戦略練り直し 再進出にも意欲
中国のEC市場に挑戦する日本の有力企業も現れている。日本最大級のファッションECサイト「ゾゾタウン」を運営するスタートトゥデイは、11年10月に中国向けのECサイト「ゾゾタウンチャイナ」を立ち上げるとともに、タオバオのサイトにも出店して日本のブランド衣料の販売に乗り出した。
ファッションに対する日中の消費者意識の違いを見極めている段階ながら、手応えもつかみ始めているという。「できることを手探りしながら地道にやっていく」(担当者)と、中国の消費者ニーズに対応しながら時間をかけて浸透を図る構えだ。
日本のEC市場も拡大しているとはいえ、中国市場の成長の余地は桁違いに大きい。楽天はいったん撤退するものの「事業環境が整った段階で再進出したい」と意欲をみせ、ヤフーも「タオバオとの関係は続いており、機会があれば再進出したい」とリベンジを狙う。中国EC市場の争奪戦が今後、さらに激しさを増すのは間違いない。(中村智隆)