IHIが低圧タービンを担当するボーイング787向けエンジン「GEnx」【拡大】
民間エンジン事業を担当する航空宇宙事業本部の井上浩一・業務部長は「寝ても覚めても燃費のことが頭から離れなかった」と漏らす。最終的に、重量を従来に比べて20%前後減らし、燃費改善に大きく貢献することになるが、決して最初からすべてがうまくいったわけではなかった。
燃費改善に大きく寄与する重量の削減は中核のテーマだ。ただ、低圧タービンを構成するブレード(歯)の枚数を削減すると、逆に空気の流れが変わり、燃費効率が悪化してしまう。形状の変更など試行錯誤の末、ブレードの素材に軽量で耐熱性に優れている「チタンアルミナイド」を採用するなどして、ようやく求められた規定を上回る燃費向上を達成した。
実現に要した期間はじつに5~6年。長期の開発の末に磨き上げてきた技術なだけに、「この低圧タービンはIHIにしかつくれない」と井上業務部長は胸を張る。
実際、自信が確信に変わる出来事もあった。昨年3月に発生した東日本大震災で低圧タービンのブレードをつくる同社相馬工場(福島県相馬市)が被災し、部品の供給が停止したときのことだ。IHIはこの状況下でも787向けの供給を止めるわけにいかず、やむを得ず同業他社にブレード生産を依頼。しかし、要求水準を満たす部品はどこの社でもつくれなかった。