速すぎる上場の背景には、官民ファンドの企業再生支援機構による支援期限が来年1月に迫っていることがある。政府は是が非でも日航を上場させ、3500億円の出資金を回収しなければならない事情があるのは間違いない。
鶴の恩返し
一方、日航の再上場に政治も横やりを入れ始めた。
「鶴には恩返しをさせなければならない」。今月6日、日航の再建の在り方を議論してきた自民党の航空問題プロジェクトチーム(PT)の会合で、出席議員の1人は、日航のロゴマークの鶴丸と昔話を掛けてこう皮肉った。
株主や債権者に迷惑をかけた企業が、会社更生法の適用で身軽になった途端、積極投資をするのは「けしからん」との理屈だ。他の出席議員からは日航に対し、減免された法人税の一部を国に返還することや、破綻後に日航が撤退した地方路線の復活を求める声も相次いだ。
日航の再建策は、民主党の前原誠司国土交通相(当時)が政治主導で決めたもので、野党の自民党からみれば格好の攻撃材料だ。民主党の分裂で衆院解散、総選挙が現実味を帯びる中、国交省は自民党の存在を無視できず、地方路線の拡充などを日航に要請する事態に追い込まれた。