しかも、ソフトバンクは20年7月に米アップルのスマートフォン(高機能携帯電話)「iPhone(アイフォーン)」を発売し、急速に加入者を増やしていた。22年度からは再びKDDIを上回るようになったが、過去の設備投資の減額が通信環境の悪化を助長させたことは否定できない。
加入者が急増するなかで設備投資を減らしたのは、18年に英ボーダフォンから携帯電話事業を買収したことで膨らんだ有利子負債の返済を優先させたからにほかならない。18年度末に2兆1581億円だった有利子負債は21年度末には1兆5010億円に急減。さらに23年度末には5472億円まで圧縮した。
大口顧客の離反
そのツケは企業顧客の“離脱”となって表れ始めた。昨年10月からアイフォーンを発売したKDDIの営業攻勢で、製薬業界最大手の武田薬品工業をはじめとする大口需要家がKDDIに乗り換える動きが出ている。今後のスマホユーザーとして期待できる企業顧客の離脱は大きな痛手で、成長シナリオの修正を迫られる可能性もある。