醤油のキッコーマンは米国で販売をスタートしてから現地生産まで16年を要した。ヨーロッパでは24年だ。短期での利益が求められる現在、約20年の長期戦を覚悟で新事業を行うことは現実的ではない。そういう余裕が社会全体にない。結果の可否をみるにそこまで時を待つのは非合理に見られる。
よくて5年以内に結果を求められる。
それまでになかった新しい味を受け入れるのに時間がかかる。スマートフォンが携帯電話の世界を変えたのとは話の次元が違う。
だが、しぶといと考えられた中東の独裁政権がソーシャルネットワークの影響もあって打倒されたのは、世界の価値の変化の速度が圧倒的に早くなったことをあらわしている。ある点に力を集中させることによって壁の穴が開きやすくなった。
この事例を食に無縁と思ってはいけない。前述したように食も合理的な判断が占める割合が大きい。とするならば、伝統的な価値や馴れの要素が強い食の世界に異分子を持ち込むのも、短期化が可能だ。
日本の食を外国に売り込むにあたり、徹底して相手市場の機能価値を見極めることではないか。そして、そこに穴を見つけることにあるのではないか。