麗人社のオフィス=大阪市北区【拡大】
絵画や書道、彫刻などの美術品を扱う出版、イベント業界では、営業にあたって有名評論家の名前を出すなど、“虎の威を借りる”手法を採る企業が少なくない。
そんな中、自社の社員の“作品鑑定力”を高め、作家の思いをくみ取ることでの契約獲得を徹底しているのが、大阪市にある麗人社。難関の資格試験「美術検定」の受験を全社員に義務づけ、作家との信頼関係を築いている。そこには野口和男社長の“業界の常識”への反発があった。
“営業的なウソ”をいうことの苦しさ
麗人社は美術系出版社で働いていた野口和男さん(53)が平成6年に設立し、社長に就任した。
「美術業界に入ったときから、ずっと“営業的なウソ”を言わなければならないことに、苦しさを感じていた」と野口社長は振り返る。業界では事実無根の作り話をするなど、“ウソ”を交えた営業手法が多いという。
例えば、ある作家に自社が主催する美術展への出展を求める際、「(有名評論家が)推薦してきたので出さないといけない」などと説く。遠慮なしにいえば、出品手数料ほしさに、いわば虎の威を借りて勧誘するのだ。