工作機械の受注額【拡大】
ただ、各社が成長エンジンと位置づける海外市場も不安を抱える。海外の受注額は10月に前年同月比3.8%減の667億円となり、好調の目安とされる700億円を2カ月ぶりに下回った。欧州債務危機の余波がタイやインドなどに及び、東南アジアが2桁を超える減少となったためだ。中国の受注は安定しているが、反日感情の高まりで先行き不透明感が拭えないなど、日本の業界は「内憂外患」に陥りかねない気配も漂う。
加えて、新興国の需要をめぐる各国の競争は激しく、ライバルのドイツでは産官学連携の技術開発を政府が資金面でバックアップし、中国政府も工作機械に関する大学の研究を支援。日本工作機械工業会の横山会長は「日本の技術水準は世界的に優れているものの、中長期的には懸念を覚える」と話す。
世界経済の減速が一段と鮮明になり、各社の業績が鈍化すれば「成長に向けた投資が縮み、安値攻勢を仕掛ける中国や韓国メーカーの台頭を許しかねない」(業界関係者)。各社とも国内生産は維持する方針だが、臨機応変の対応を今後迫られる可能性もある。難しい経営のかじ取りの中、攻めの投資を可能にする成長戦略を打ち出せるかが、勝ち残りの鍵を握りそうだ。(今井裕治)