立て直し取り組みを業界注視
帝人は昨年8月、家具チェーン大手ニトリとの共同開発事業を立ち上げ、12月には高機能素材の開発や商品の企画・提案などを担う専門組織「ニトリプロジェクトチーム」を新設。丈夫で軽い合成皮革を使ったランドセルや、着火しても燃え広がりにくいこたつ布団などを展開してきた。今後も両社で年間2~3商品を新たに開発し、順次市場に投入していく計画だ。
米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)と取り組んでいる炭素繊維複合材料を使った自動車部材の共同開発も期待が大きい。炭素繊維は車体の軽量化に役立つ素材として市販車にも採用が広がったが、部材の製造にコストと手間がかかるため一部の高級車にとどまっているのが現状だ。
そこで帝人は世界最速の1分で部材を連続成型する技術を開発。量産車への採用に道筋を付けた。現在は「量産化プロセス確立に向けた検証が最終段階に入った」(同社)という。
日本の繊維産業は石油危機や輸入品急増などの中で生き残りをかけた多角化を進め、帝人のように繊維を基幹事業に据えるメーカーは少なくなった。それだけに、帝人の高機能繊維事業立て直しに向けた取り組みは業界内でも関心を集めている。(豊田真由美)