「賞味期限切れの経営者には辞めてもらい、日産自動車のカルロス・ゴーンみたいな人に舵を切ってもらいたい」。総会では、男性株主が、わざわざ他業種の経営者の名前をあげて、業績改善を迫る一幕があった。現経営陣への痛烈な批判だ。
誰も議論しない“黒衣”の将来
津賀社長は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)テレビの量産技術を他社に有償で供与する方針を打ち出すなど、従来の家電メーカーのビジネスモデルを抜本的に変革しようとしている。
消費者向けの家電製品だけではなく、企業向けに技術・製品を販売する“黒衣”のビジネスを強化する方針だ。
良い商品を消費者に安く大量に供給する「水道哲学」に象徴されるパナソニックの経営スタイルは180度転換されようとしている。その“歴史的瞬間”にもかかわらず、株主からは、新戦略に対する質疑や批判があまりにも少なかった。このため、「パナソニックの将来像について前向きな議論があまり交わされなかった」(証券アナリスト)という指摘もある。
下手をすれば、「パナソニックは将来像をうまく描けていない」という烙印(らくいん)を押される恐れもある。津賀社長の発信力が試される1年になりそうだ。