ビール大手3社の経営状況【拡大】
海外事業拡大に向けて、銀行からの借り入れや社債発行に頼る資金調達では、潤沢な投資資金を誇る米企業の大型M&Aに太刀打ちできず、財務悪化も招きかねない。さらにHDの上場は、これまでの創業家主導の経営に齟齬(そご)を来す危険性もはらむ。
いいとこどり戦略
そこで、サントリーがひねりだしたのが、高い成長が見込める清涼飲料・食品事業を担うサントリー食品のみを上場させて、資金調達と創業家の影響力確保の「いいとこどり」を狙った戦略だった。
だがこの戦略は、もろ刃の剣ともなりかねない。
その一因になり得るのは皮肉にも、過去の成功体験だ。サントリーは、成功するかわからなかったウイスキー事業を開発から十数年かけて看板商品に育て上げ、さらにビール事業を参入46年にして黒字にこぎつけた。非上場企業のメリットを生かした息の長い経営を是とする社風がある。