今回は科学で突破できない
関電と破砕帯のエピソードといえば、昭和38年に完成した黒部川第四発電所(富山県)建設工事だ。トンネル工事で長さ80メートルの破砕帯に遭遇。地下水が毎秒660リットルも吹き出し、一時は掘削不能になった。当時の最新技術を結集し、7カ月かけて破砕帯を突破。クロヨン最大の難関を乗り越えた。
当時社長の太田垣士郎は現場に立ち入り陣頭で作業員を鼓舞。本社では「鉛筆1本、紙1枚まで節約し、黒部を助けよう」という運動が起こり、工事を支えた。
クロヨン完成50年を迎えた今年、再び破砕帯に直面したのは巡り合わせか。今回勝手が違うのは、相手が自然ではなく、規制委という組織だという点だ。科学技術だけでは乗り切れない平成25年の“破砕帯危機”を関電は突破できるか。間もなく正念場を迎える。(内山智彦)