国産ジェットの誤算
もっとも、成長への道のりは平坦ではない。8月22日、三菱重工の子会社の三菱航空機(名古屋市)は開発を進める「MRJ」の初号機の納入を1年以上延期すると発表した。開発計画の延期はこれで3度目。ブラジルのエンブラエルとカナダのボンバルディアの2強に加え、ロシアや中国の企業も参入する中、「今後、受注競争で苦戦するのではないか」との見方が業界で広がった。
三菱重工は航空事業を成長エンジンと位置付けており、その柱が米ボーイングの1次下請け事業とMRJだ。鯨井洋一常務執行役員(航空宇宙事業本部長)は「下請けは利益もあるし、一つのビジネス。しかし、完成機メーカーを目指さないかぎり成長していくのは難しい」とMRJ開発の意義を強調する。開発費は約1800億円で、社運をかけたプロジェクトだ。
ただ、これまでの受注は325機にとどまり、500機前後とされる採算ラインには届いていない。開発に失敗すれば、経営にも打撃を与える。宮永社長は「長期的に考えれば発展のチャンスが増える。我慢しても投資を続けないといけない」と話す。航空事業の成否が5兆円企業への飛躍のカギを握っている。