■おいしさ追求へ 保形性と溶解性両立
本格的な秋の気配が感じられる頃になると恋しくなるのが、アツアツの鍋料理。液体物が主流の鍋つゆ市場だが、昨年秋の発売以来快調に売れ行きを伸ばしている味の素の「鍋キューブ」は、キューブ状のブロック1個につき1人前の鍋つゆが出来上がるタイプだ。ヒットの秘密を詳しく聞いた。
◆市場参入に高いハードル
「鍋キューブ」を開発したのは「ほんだし」の事業部。発売以来40年以上の歴史を持ち、商品の認知率も高く、日本の台所の隅々まで浸透している「ほんだし」は、これ以上販売量を伸ばすことが難しくなって久しい。
「ほんだし」の技術を利用した新たな商品開発が、ここ数年来同事業部の重要な課題となっていた。120を超える新製品のアイデアの中から浮上したのが、キューブ状の鍋つゆの開発だった。長年積み重ねてきた「固形コンソメ」の設備、製造技術を応用することができ、モニターによるコンセプト評価でも非常に良い反応が得られた。
しかし、鍋つゆ市場は、少数の企業にシェアが集中しており大企業といえども参入することは難しい。ロングテールの一部として小さな売り上げに甘んじることが許され難いという点では、むしろ大企業の方がハードルは高い。実際に、味の素も10年ほど前に粉末タイプの鍋つゆを発売したが、売り場へ定着させられなかった経験を持っている。