観光客にもおなじみの風景となった黒部ダムの観光用放水(内山智彦撮影)【拡大】
そのクロヨンが改めて注目されたのは、東日本大震災以降。東京電力福島第1原発事故後、再生可能エネルギーとして水力が見直され始めただけでなく、原発の稼働が低迷するなか、電力供給を補う“柱”的な存在となっている。実は、クロヨンの完成で一通りの開発を終えた黒部では、「平成版」の黒部開発計画が今も進行しているのだ。
さらなる発電量増へ
昨年末、黒部川水系の黒薙川で、約12年ぶりに水力発電所が稼働した。今年7~8月の2カ月間、クロヨンなど黒部川水系にある11発電所の発電量合計は9.4億キロワット時に達し、平成12年以降で最大だった昨年実績(8.6億キロワット時)を抜いて最大記録を更新した。
11発電所の出力合計は約89万キロワットで、今夏関電が想定したピーク時の電力供給の余力にほぼ匹敵する。「稼働から15~20分でフル出力が可能という、立ち上がりの早さ」(担当者)も強みといい、電力不足解消の頼みの綱だ。
来年春には、小規模水力発電所の建設に着工。黒部川第二、同第三発電所の水車取り換えなども実施し、出力を増強させる計画だ。さらなる電力を生み出す試みは、平成の今も続いている。
原発ゼロのまま迎える可能性が高い今年の冬。黒部の水力が奮闘する場面がまた増えそうだ。(内山智彦)