経団連は22日の政労使会議で、賃上げで経済の好循環を実現する決意を明記した文書を提出した。来春闘の方針に反映する。株価の上昇など足元の経済情勢は明るさを増しているが、中小企業や非正規雇用者など全体への波及はこれからで、来春闘では賃上げの波及をめぐる攻防が必至だ。
安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」効果で、企業の賃上げ機運は近年になく高まっている。経団連が11月上旬にまとめた大手企業の冬季ボーナスの第1次集計は、前年同期比5・79%増の82万2121円と高い伸びとなった。円安株高の進展で輸出企業を中心に業績を改善する企業が相次ぎ、企業の内部留保も増加傾向にあるとみられる。
今春に安倍首相が賃上げ要請をしたときには「可能な企業から」と賃上げに慎重姿勢を崩さなかった経団連が賃上げ方針を書面に明記したのは、こうした経営環境の好転が大きい。
もうひとつの要因は安倍政権の下支えだ。今後、税制改正や成長戦略の関連法案の成立などこれからが本番で、実効を挙げるにはなお時間がかかる。消費税増税を行いつつ円安株高で内需を刺激し、デフレから脱却するという政府のシナリオは「瀬戸際に立っている」(長谷川閑史経済同友会代表幹事)との認識だ。
経団連の宮原耕治副会長は「本当は明記したくない、だが賃上げを明記しないと安倍政権がもたない」ともらす。