グロウもレヴチンの会社も、シリコンバレーで言えば、クアンティファイド・セルフ(自己定量化)という大きなトレンドの一部を形成していることになる。テクノロジーを利用し、自己にまつわるあらゆることを数値化してより良い人生に生かそうとする動きのことだ。身体の中に取り入れる空気や食物などのインプット、気分や血中酸素濃度などのステータス、そして心身両面のパフォーマンスといったことをデータとして取得して、追跡管理しようとする。このトレンドから見れば、患者が自分の健康状態をデータとして持てば、それによってもっと賢い判断ができると考えられる。賢い判断とは、不必要な治療を避けたり、最も重要な治療に焦点を絞ったりすることだ。
日本でも不妊治療は安くないと思うが、例えばアメリカで体外受精をしようとすれば、その費用は4万ドルにもなりうる。保険会社はその費用をまったくカバーしないことも多く、いくらか保険が適用されたとしてもほんの一部にとどまる。保険会社にとってみれば、受精は選択的な治療であり、急を要しないと考えられるからだ。しかし、子供の誕生を望む家族にとってみれば、受精を成功させることこそ緊急の課題に違いない。