今後、グロウが直面する最大の課題は、ユーザーから性生活に関する詳細な個人情報をいかに継続的に提供してもらうかという点だ。しかし、多くのカップルがプライバシーを少々明け渡すことなど妊娠するためなら安いものと考えるようだ。
不妊治療は年間50億ドル規模の一大産業で、アメリカだけで1000万のカップルが治療を求めている。誰かがこの問題を、ビッグデータを使って解決できるとすれば、レヴチンのグロウほどこれに合う経験を持つチームは他にないだろう。しかし、ファイナンスとは異なり、健康管理は極めて感情的な問題だ。データを収集し、処理し、意味のあるまとまりにして吐き出すだけでなく、プログラムやデータベースでは計測しきれないことにまでうまく気を使わなければ課題の解決に寄与したとはいえない。
◆限りない可能性
ビッグデータを使った健康管理には限りない可能性が広がっており、私は特にマックス・レヴチンとHVFのチームから今後どんなアイデアが形になってくるのか楽しみにしている。人類の健康という分野においては、膨大なデータの高速処理にたけているだけでは足りず、感情的な配慮と深い思いやりが不可欠になってくる。その部分を欠いてビッグデータの利用が進んでしまえば、SF映画によってたびたび描かれてきた、人間性の失われた恐怖世界に近付くことになる。そこでは、健康管理が私たちの健康を守るためではなく、破壊するために行われることになりかねないのだ。
恐怖はさておき、今のところ、私たちはビッグデータを使って赤ちゃんを作れる時代が来たということができるのではないか。赤ちゃんの誕生によって、家族に、そして私たちにもたらされるのは、希望だ。
文:イジョビ・ヌウェア
訳:堀まどか