□片岡一則・東京大学教授に聞く
■「iCON」 ナノ医療使い製品化まで一貫体制
実験動物中央研究所、川崎生命科学・環境研究センター(LiSE)に続くキングスカイフロント第3期施設として「ものづくりナノ医療イノベーションセンター(iCON)」が2015年1月に竣工(しゅんこう)する。敷地面積は約8000平方メートル、延べ床面積は9500平方メートルで、最先端の医療技術として注目を集める「ナノ医療」を基軸にさまざまな医療課題の解決に挑戦する。iCONの研究リーダーでありナノ医療の権威である東京大学の片岡一則教授に話を聞いた。
◆開発・改良をスピード化
--ナノ医療は新しい医療技術として注目されている
「ナノ(ナノは10億分の1)メートルサイズの微小薬剤を体内の狙った部位に、効果的なタイミングで集中的に送り込む技術だ。ナビやセンサー機能を持つ『レゴ分子』を組み合わせて『高分子ミセル』と呼ばれるナノマシンを構築し薬剤を搭載する。高分子ミセルは血管を通って患部組織に到達し薬を放出する。正常な組織を壊すことなく標的のみを治療できるため、副作用が少なく治療効果も高い」
--難病克服に向けた開発が進んでいる
「抗がん剤を搭載したミセル製剤の臨床試験中だ。早ければ来年度中にも乳がん治療などに効果の高いパクリタキセルを載せたミセル製剤が承認申請に進む。ほかにも手術や放射線治療が難しかった転移性のがんを治療するミセル製剤や、認知症や脳腫瘍を治療するために脳内血管に入り込むミセル製剤の研究も進んでいる。高分子ミセルという“乗り物”を使えば新薬の開発も飛躍的に進む。新薬は必ずしも新規化合物とはかぎらない。副作用が原因で使えなかった薬剤や、開発が中断された化合物がミセルに搭載することで新薬へと生まれ変わる可能性もある」