新日鉄住金は自動車用鋼板の評価が高い。需要家と一体になって鋼板を開発しているが、薄くて硬く、加工するときには成形しやすいよう柔らかくなくてはいけない。こういう鋼板をつくるのはノウハウなんです。設備をいくら造っても無理。そういうノウハウを絶対に外に出さないようにしないと。
海外では現地企業と合弁でやっているが、そのときまでに開発したものしか出さない。産業スパイの問題もあるし。もちろん必要があれば対価をもらって出しますけど、原則は新しく開発したものは出さない。発展していく先は海外だけど核になる技術は日本国内に置いて守るということです。
そのときに必要なのは、やはりイノベーション(革新)です。モノづくり立国は規模を大きくしても、肝心のモノが悪ければダメですから。イノベーションをきちっとやってノウハウを蓄積し外へ出さない。これが僕らの合併経験から考えられる日本の産業の将来像ですね。(早坂礼子)
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【プロフィル】今井敬
いまい・たかし 1929年、神奈川県生まれ。52年東大法卒、富士製鉄(現新日鉄住金)入社、副社長を経て93年社長、98年会長。同年から経団連第9代会長も務めた。2003年から現職。