樽正でも当時すでにジャムをつくっていたが、「洗練されていなかった。どうしても本物のジャムをつくりたかった」。
日本で一般的なのは、合成ペクチンやゲル化剤などを使って果肉と果汁を固めるジャム。パゼス氏から学んだのは、果物にもともと含まれる天然のペクチンを生かし、砂糖とレモン汁を加える伝統的製法だった。
◆通信販売に特化
現在、ジャムは樽正本店の売上高の約25%を占め、季節に合わせて計約20種類のジャム商品を販売している。「いちごジャム」が160グラム515円、480グラム1380円とやや高めの価格設定だが、カタログやインターネットによる通信販売に特化して根強い顧客層を獲得している。
石川社長は「果物の風味が生きた当社のジャムは、スーパーなどで売られている一般的な商品とはまったく違う」と自信をもっている。昨年ごろからはホテルや百貨店などから「高級商品として扱いたい」との依頼も入るようになった。
2009年には経済産業省の地域産業資源活用事業計画の認定を受け、中世ヨーロッパの貴族たちが食したとされるジャムの一種を商品化した「リアルジェリー」を発売。約5年前からは、神戸大と共同でジャムに適した野生ナシの開発も進めている。
「西洋ではジャムやジェリーはパンに塗るだけでなく、肉料理に添えるなどして食べる。果物によっても多彩なジャムができる。そうした楽しい食文化を多くの日本人に知ってもらいたい」と意欲を語る。(牛島要平)
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【会社概要】樽正本店
▽本社=神戸市灘区琵琶町3-2-1
▽設立=1995年12月
▽資本金=1000万円
▽従業員数=15人
▽売上高=8500万円(2013年9月期)
▽事業内容=加工食品の製造販売
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